一般社団法人那智勝浦観光機構(NACKT)は26日、那智勝浦町の体育文化会館で社員総会を開いた。構成17社のうち、委任状を含む16社が出席し、2025年度の事業計画や予算案を承認。現状の体制見直しを求め、社員から厳しい意見が相次いだ。
2020年4月に設立された地域づくり法人(DMO)で、観光関連の事業者や行政、社寺などで構成。本年度新たに浦島観光ホテル株式会社と株式会社中の島が加入。南紀勝浦温泉旅館組合の解散に伴い、清水貞吾理事長が辞任し、後任に浦島観光ホテル代表取締役社長の松下哲也さんを選出した。
機構事務局からは、24年度の観光動向や事業報告があった。総合パンフレット「那智勝浦」の刷新・多言語化に取り組んだほか、生マグロ解体など新たな体験商品の販売も始めた。一方で、英語ガイドの不足が課題として挙げられた。
25年度は、観光客のターゲットを「首都圏の若年層」に設定。「すでにある程度の知名度がある近畿圏ではなく、観光消費額の高い関東圏、特に若年層を開拓したい」として、「ツーリズムEXPOジャパン」など各地のプロモーションに参加する方針を示した。
総会では社員から「自主財源の拡充を」「人手不足への対応は」「定量目標があまりに少なく、感覚で商売をしているように見える。明確な数値目標を示し、透明性を持った形で地域に開示すべき」「ターゲット設定について、観光客のニーズ分析や事業者ヒアリングなどの根拠はあるのか」など、厳しい指摘が相次いだ。
さらに「専門部会は、飲食、宿泊、物販など業態別ではなく、プロジェクト別に再編すべき」「事業年度が4月始まりなのに、総会まで3カ月間、承認なしで事業を進めるのは問題だ」など運営面での見直しを求める声も上がった。
新たに就任した松下さんは「観光が日本を支える持続可能な産業だと思っている。自社の利益だけでなく、地域全体を視野に盛り上げていく立場を任され、大変光栄。那智勝浦町にはポテンシャルの高い観光資源、伸び代のある要素が多く、それらを広く世の中に伝えていくことが役目。観光機構だけでなく、行政、民間事業者も一緒になって進めていきたい」と語った。
(2025年6月28日付紙面より)