紀伊半島大水害(2011年)から15年が経過した。あの時のことを忘れないように、忘れさせないように各地で犠牲者を悼む慰霊行事が行われている。とりわけ被害の大きかった那智勝浦町や新宮市でも遺族や関係者らが故人をしのび、
災害から命を守ると誓いを新たにした。
那智勝浦町井関の
紀伊半島大水害記念公園では4日未明、遺族や関係者らが参列。土石流が発生したとされる午前1時に、町内の死者数と同じ29個のキャンドルをともして黙とうした。
同公園に設置されている石碑には、犠牲者29人の氏名が刻まれている。
訪れた遺族らは、1分間の黙とうをささげ、キャンドルに灯火。手を合わせて冥福を祈った。
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■「天国でゆっくりと」
岩渕千鶴さん(86)は、最愛の夫・三邦さん=当時(76)=と中学3年だった孫・紘明さん=当時(15)=を亡くした。岩渕さんに
水害当時を振り返ってもらった。
当時、井関郵便局の近くに住んでおり、岩渕さんは家の2階にいた。1階部分にまで水が達し、命の危険が迫っていたが、このままだと家が飲み込まれてしまうと思い、意を決して外に避難した。しかし濁流に流されてしまう。三邦さんと紘明さんが2人がかりで救助するも、大きな流木で紘明さんが押し流されて姿を消してしまった。数日後、近隣住民の捜索で紘明さんの遺体が見つかったという。三邦さんは近所の家の片付けをしていた際、体を壊して亡くなったという。
この公園の石碑が2人の墓だという。岩渕さんは「家の仏壇では、2人の誕生日が来るたびに〝今年で○歳やねぇ〟と声をかけている。今日もここに来る前に2人に〝行ってきます〟と伝えてきた。天国でゆっくりとしてほしい」と話した。
(2026年9月5日付紙面より)