那智山青岸渡寺(髙木亮英住職)が企画・制作を進めていた「那智山古絵図」がこのほど完成した。現在の那智山の地形を基に考証を重ね、江戸時代中期の景観に坊舎を書き加えて復元的に構成されている。
那智山には古絵図が数多く伝わっているが、その多くは仏塔や社殿を中心に描かれたもので、那智山全域の景観を描いたものはほとんど見られない。かつて那智山には「三十六坊・七本願」と称される坊舎群が存在し、その景観は大いに隆盛を極めていたと考えられる。
同寺と縁の深い滋賀県大津市在住の津田治子さんが賛同・協力。以前に「那智山鳥瞰(ちょうかん)図」を制作した「葵(あおい)画房」の延木由起子さん(同市)が作画を担当した。10日に完成奉納法要が営まれ、津田さんや延木さん、古絵図を監修した熊野学研究委員・山本殖生さんらが参列した。
江戸時代中期に写真は当然存在せず、古絵図は同寺から寄せられた数多くの資料を基に、延木さんが半年以上かけて手描きで制作した。A0サイズ(横84㌢、縦120㌢)のキャンバスに鉛筆で下図を描き、透明水彩絵の具で色付けしてぬくもりをプラス。大門坂や妙法山、那智の滝といった那智山特有の風景と、その周辺にたくさんの坊舎が存在してにぎわっている様子が伝わる力作となっている。
延木さんは「普段はA1やB1サイズの絵を描いており、こんなに大きな絵を描かせていただいく機会はあまりなく、ありがたい」。津田さんは「立派な絵に仕上げていただき、法要までしていただいて感謝」。髙木住職は「青岸渡寺の末代までの宝として残していく」とそれぞれ話した。
(2026年6月14日付紙面より)