太地町の国際鯨類施設で23日、南紀熊野ジオパーク東牟婁議員連盟協議会の研修会が開かれた。郡内の町村から議員や事務局員ら約50人が参加し、県立南紀熊野ジオパークセンターの福村成哉主査研究員が「ユネスコ世界ジオパークと南紀熊野ジオパーク」をテーマに講演した。
冒頭、芝山定史会長(串本町議会議長)が「2年ぶりの研修会。ジオパークへの理解を深め、持続可能な地域発展に生かしてほしい」とあいさつ。
福村さんはジオパークについて「国際的に重要な地質遺産を持つ、一種の自然公園」と説明。発足の経緯に触れ「フランスのオートプロバンス地質保護区で化石の盗掘が問題となり、これを契機に1991年に『地球の記憶の権利に関する宣言』が行われた。2000年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の支援を受け、欧州ジオパークネットワークが発足した」と述べた。
「地質遺産は地球46億年の歴史と生命の営みを伝える貴重な記録。化石や地質資源を売らなくても地域の発展が可能になるよう、ジオツーリズムの推進やガイド育成など、地域に利益をもたらす仕組みづくりが重要」と語った。
那智の滝や橋杭岩、瀞峡、滝ノ拝などの成り立ちや、地形が与えた文化への影響を紹介。太地町の捕鯨について「山見があった平見地区は、波の浸食でできた平らな地形が隆起して形成された。町には断層もあり、その周辺にできた砂浜でクジラを引き揚げていた。捕鯨が盛んだった背景にも地形がある」と話した。
現在、日本には48地域のジオパークがあり、うち10地域がユネスコ世界ジオパークに登録されている。福村さんは「世界ジオパーク登録を目指すには、まず日本ジオパーク委員会の推薦を受ける必要がある。推薦できるのは1年に2件のみ。さらに世界ジオパーク評議会の審査を経て、ユネスコ執行委員会の承認を得る必要がある」と説明。▽地質遺産の国際的価値▽運営・管理体制▽教育・普及活動▽自然資源・地質災害・気候変動への取り組み▽国際ネットワークとの連携―などが評価項目にあるとし「基準は年々厳しくなっているが、この地域には世界的にも優れた地質遺産がある。地質の視点からその魅力を伝えていきたい」と話していた。
(2025年10月26日付紙面より)
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