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巫女が檜扇の台座を拭く=4日、熊野速玉大社
扇立祭の檜扇蔵出し
ほこり払い斎行を準備
熊野速玉大社

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扇立祭
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 熊野地方の夏の風物詩として1000年以上の伝統を持つ「扇立祭(おうぎたてまつり)」=14日(月)=を前に、新宮市の熊野速玉大社(上野顯宮司)は4日、祭り当日に各殿で開帳する檜扇(ひおうぎ)7握を虫干しのため蔵出し。損傷がないかを確認した後、巫女(みこ)がほこりなどを払った。

 扇立祭は、神前に立てられた檜扇に神が降臨し、氏子が病気にかからないよう、また五穀に付く虫を追い払って豊作を願い始まった。室町時代の作品と伝わる檜扇は大社を代表する宝物で、日本に18握ある国宝のうち10握が大社に伝わっている。ヒノキの薄い板の木目の美しさを生かしながら彩色、金箔(きんぱく)、銀箔(ぎんぱく)が施されており「熊野檜扇」と呼ばれている。県指定の重要文化財も1握ある。

 祭りで使用されている檜扇7握は、1964年に模写されたもので、本殿用(高さ1・5㍍、幅1・65㍍)は大社先々代の故・上野殖宮司、残り6握の各殿用(高さ0・8㍍、幅1・3㍍)は故・杉本義夫さんが模写し、故・鮒田和往さんが奉製したものとなっている。

 なお、今年の扇立祭は午後5時30分から神事を斎行。檜扇は8時過ぎまで開帳する。また午後6時30分から、演歌歌手の滝さゆりさんによる奉納歌唱や福引を予定している。敬神婦人会によるお茶会や露店商組合の出店も行われる。

 濵中孝成禰宜(ねぎ)(49)は「例年のように良い祭りができれば。五穀豊穣(ほうじょう)や身体健勝を祈願したい。皆さんが病にかからず、実りが多い秋を迎えられたら」と話した。

(2025年7月5日付紙面より)


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稚魚を放流する児童=4日、那智勝浦町の那智川
地域 那智川にアメノウオ放流
ふるさとの清流再生を
南紀くろしお商工会
 南紀くろしお商工会東部支部(岡本英博支部長)は4日、那智勝浦町立市野々小学校の全校児童29人の協力の下、那智川にアメノウオ(アマゴ)の稚魚約500匹を放流した。

 商工会の重点事業「地域環境への貢献」の一環で、環境学習や那智川美化を兼ねて実施。那智川にはかつて多くのアマゴが生息していたが、紀伊半島水害で減少。恒例だった放流事業も中断していたが、昨年13年ぶりに再開された。

 アマゴはサケ科の淡水魚で、稚魚の体長は約10㌢。一生を川で過ごすもののほか、海へ下って成長し、サツキマスとして戻ってくるものもいる。稚魚は熊野市の赤倉水産(福本和亮代表)が提供した。

 児童が学年ごとに学校裏手を流れる那智川に放流。流れに逆らって泳ぐ稚魚の姿に「あ、あそこ!」「頑張れ、頑張れ!」と歓声が上がった。

 榎本航さん(6)は「魚が好きだから見られてうれしかった。赤い斑点があったよ」。木下葵葉さん(6)は「アメノウオっていう魚について初めて知った。大きくなったら釣って食べてみたい」と笑顔を見せた。

 岡本支部長は「清流は子どもたちの財産。ふるさとの清流を取り戻し、子どもたちとふるさとづくりをしていきたい」と話していた。

(2025年7月5日付紙面より)

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6年ぶりに農事「虫送り」を営んだ有志や子どもら=6月29日、串本町高富
地域 有志発起で6年ぶり実施
高富伝統の農事「虫送り」
串本町
 串本町高富で6月29日、農事「虫送り」が営まれた。6年ぶりの実施で、往事を懐かしむ高富区民の注目を浴びながらその行列が進行した。

 この農事は、乗っている馬が収穫後の稲株につまずいてバランスを崩し落馬したところを敵に討たれた平家方の武将・斎藤実盛(さねもり)の怨念が害虫となりイネを食い荒らすという言い伝えに由来。高富では約300年続いた歴史があり、近年は担い手の減少を受け「地域が誇れる伝統文化を守る」と発起した高富区が区行事に位置付けて応援する形で続けていたが2019年を最後にコロナ禍で歴史の断絶を余儀なくされた。

 今年に入り、この農事を幼少の頃からずっと見てきた濵昌子さんが有志を集めて発起。半ばで合流する子どもは区外在住の地縁者にも声をかけて誘い、家族の随行を含め60人ほどの参加を得てこの日営むに至った。

 実盛の怨念(高富ではクロカメムシがその化身)を詰めたわら船を行列の先頭にし、当たり鉦(がね)を2回打ちほら貝を1回吹き鳴らして進む様子からカンカンプーとも通称されている高富の「虫送り」。有志が高富の農業水利を支えるため池から各水田を経由して高富川河口を目指し、途中で待機する子どものたいまつに火を分けて行列の規模を増した。その明かりで害虫を誘って「実盛様のお通り よろずの武者おとも」と口上を述べながら進み、河口そばの浜にたいまつを挿し立ててわら船を波打ち際から海へと送り出す状況を形にした。

 たいまつとわら船は農事後に全て回収してたき上げ、奉仕した子どもは菓子をもらって解散。濵さんは「子どもの頃から『虫送り』が営まれるのを楽しみにしてきた。それがコロナで途絶え今の子どもがそれを知らないのは駄目だと思い、復活させようと思った。高富では『虫送り』が300年以上続いてきたことを参加してくれた今の子どもたちにも感じてもらえたら」と期待し、たき上げを終えて農事を締めくくった。

(2025年7月5日付紙面より)

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