那智勝浦町と株式会社シェアウィング(東京都、佐藤真衣代表取締役)は22日、同町の大泰寺で初の「デジタルノマドリトリート2025」を開いた。米国やチェコ、フランス、タイ、韓国などから約20人のデジタルノマドが参加し、寺社を舞台にした文化体験や交流を楽しんだ。
デジタルノマドは、IT技術を活用して場所に縛られず働く人を指す。プログラマーやデザイナーなどリモートで働ける職種が中心で、日本では24年4月にデジタルノマドビザを新設。年収1000万円以上など一定条件を満たす国籍の人が、最長6カ月滞在できるようになった。
町は24年11月、寺社に特化した宿泊・体験サービス「OTERA STAY」を展開するシェアウィングと包括連携協定を締結。歴史資源を活用したデジタルノマド観光の振興を進めており、新たな連携事業として今回のイベントを企画した。
ツアーでは那智山観光のほか、生マグロ解体、鐘突き、瞑想や禅サウナ、地元食材を使った食事などを提供した。
開会セレモニーで堀順一郎町長が「仕事をしながら熊野の自然や文化、交流を体感し、有意義な時間にしてほしい」とあいさつ。大泰寺の西山十海住職もプレゼンテーションで、創建から1200年の歴史や地域コミュニティーにおける寺院の役割を紹介。日本全国の寺社の約3割が30年以内に消滅する可能性があることに触れ、「デジタルノマドに注目する自治体はまだまだ少ないが、この町をデジタルノマドの楽園にしたい」と述べた。
韓国から参加した千叡智さん(37)は「日本デジタルノマド協会の中野智恵代表から話を聞き、韓国への帰国の予定を変更して参加した。那智の滝と三重の塔の写真は見たことがあったけれど、ここだったのかと驚いた。実際来てみると、とてもエネルギーのある場所。古道を歩いたり、地域をゆっくり見てみたい」と話していた。
(2025年11月29日付紙面より)