来年4月8日(水)から熊野那智大社境内「斎館」で始まる「那智大瀧展」を記念したトークショーが11月29日、那智勝浦町体育文化会館であった。2人の画家が那智大瀧展の意義や制作の背景を語り合った。
長年にわたり熊野を描き続けてきた鉛筆画家・篠田教夫さんをはじめ、全国で活躍する作家の情熱が結集して実現した同展。篠田さん、塩谷亮さん、榎俊幸さん、奥山忠さん、梶岡俊幸さん、川又聡さん、熊谷曜志さん、松岡歩さん、八木幾朗さん、安原成美さん、谷津有紀さんが出品する。篠田さんは2009年に初めて熊野を訪れ、那智大瀧の荘厳な姿に心を打たれ、これまでに4点を熊野那智大社へ奉納している。
トークショーでは、「なぜ画家は那智大瀧を描くのか」をテーマに、日本の伝統美を尊びつつ独自の表現で力強い作品を生み出す日本画・洋画のベテラン画家、八木さんと榎さんが制作への思いや作品にこめた願いを語った。いずれも日本美術家連盟会員で、那智大瀧展に出品する。
国宝「那智瀧図」をスライドに映しながら、榎さんは「子どもの頃にこの絵を見た。日本刀のように立つ美しい形で、日本人の精神を写しているようだった」と述懐。満月の夜の滝を一目見ようと20年前に那智を訪れ、その神秘的な姿に引かれて滝の研究と制作を重ねてきたという。「導かれるような思いを込め、『みちびき』と題した縦7㍍横1㍍の作品を描いた。熊野那智大社に展示されることに意味がある」と語った。
八木さんは屏風(びょうぶ)に墨で描いた新作について説明。「直感で描くことが多いが、那智大瀧展のお話を聞いた時は本当にうれしかった。世界に知られた素晴らしい滝。訪れた際、その圧倒的な存在感に感動し、誠心誠意描かなければと感じた」と話した。「那智の滝は信仰の対象。大きな岩の造形は涙が出るほど美しい。絵は人の心を写すもの。技術だけでなくプラスアルファが大切」と表現への思いを述べた。
那智勝浦町展に出品した那智の滝を描いた作品を講評。「生命力を感じる」「筆に勢いがある」と評価を受けた田中掬代さん(82)は「講評を受けて感動しました。力強いと言っていただき、これからも描いていけると思った」と話していた。
(2025年12月2日付紙面より)