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新宮校舎となる現・新宮高校
新生「新宮高校」始動へ
4月に統合、2校一つに
校訓校是を掲げて歩む

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新宮高
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 和歌山県立の新宮高校と新翔高校が統合して誕生する、新生「新宮高校」が4月、いよいよ始動する。新宮・東牟婁地域の生徒に必要な、あらゆる学びを集約。「自律 敬愛 創造」を校訓、「文武両道」を校是として歩み出す。

 「自律」は「自身の立てた考えに従って主体的に行動する人であれ」。「敬愛」は「他を敬い、友を愛し、共に学ぶ人であれ」。「創造」は「新しいものをつくり出す人であれ」との願いを込めた。「文武両道」は学習とスポーツ・文化活動の両立を目指し、何事にも前向きに取り組む人材を育成すべく決めた。

 新生「新宮高校」は「全日制」「定時制」「通信制」の三つの課程を持つ。「全日制」は▽学彩探究科▽普通科▽総合学科―に分かれる。

 学彩探究科は探究学習を取り入れ、知識の習得にとどまらない「もっと知りたい」を大切にする学習を展開する。文系・理系を問わず国公立大学への一般受験に対応できる。

 普通科は、他者と協働しながら学び「理解できた」に重点を置く。私立四年制大学、短期大学、専門学校への進学や、民間企業への就職、公務員試験の合格などを目指せる。

 総合学科は、社会で役立つ「実学的な専門分野の学習」や「資格取得」などに取り組む。進路は就職を軸とするが、専門学校や大学への進学も可能となる。

 「定時制」は▽昼間部▽夜間部―がある。昼間部は「多様な生徒と協働」しながら学び、「社会的自立」を目指す。夜間部は「基礎学力の定着から応用的な学びまでの幅広い学習」に取り組み、「地域社会に貢献できる力の育成」を行う。

 「通信制」は「自分の夢や目標に向けた進路の実現」や「学び直しを含めた基礎学力の定着」を狙う。

 校舎は、現・新宮高校を「新宮校舎」、現・新翔高校を「新翔校舎」として残す。新宮校舎は学彩探究科と普通科の1~3年生、総合学科の1年生、新翔校舎は総合学科の2、3年生と定時制昼間部が使用する。定時制夜間部と通信制は新宮校舎となる。

  □     □

校章デザインも決定 制服は男女ブレザー型

 新生「新宮高校」の校章や制服も決定している。校章は「おおらかな熊野の恵みを受け、伸びやかに学び、未来に向かって大きくはばたけ」との願いを込めている。制服は男女ともにブレザー型で、女子はスカートとスラックスの両方から選べる。

 校章は「△」と「S」を組み合わせたデザインとなっている。「△」は熊野三山を、「S」は新宮・新翔の頭文字であり、また熊野川の流れを表すとともに、羽ばたこうとする姿も重ねている。

 熊野川は山から流れ出て大海に注ぐことから、「S」の曲線は新宮高校での伸びやかな学びを表し、学びを通して成長した生徒らが無限の可能性をもって世界に踏み出すさまを象徴している。

 制服は爽やかで落ち着きがあり、清らかな印象の「紺色」を基調としている。ネクタイやリボン、スカートのラインは、熊野の海と山をイメージした青と緑をあしらった。スカートの折り目の中にピンクのラインを入れて、華やかさも加えている。

■現・新宮高校歌を継承
 新生・新宮高校の校歌は、現・新宮高校のものを引き継ぐことが決定している。スクールカラーは、現・新宮高校の「紺」と現・新翔高校の「青緑」の中間に位置する色として、「青」になる。

(2026年1月1日付紙面より)


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生徒へ自律走行型支援ロボット「temi」の導入を報告
学校 人材育成での活用に期待
串本古座高校へ「temi」
串本町
 和歌山県立串本古座高校(中西浩子校長)に自律走行型支援ロボット「temi(テミ)」が導入された。先行して3台が割り当てられ、今後はさらに2台が追加される予定。未来創造学科が目指す人材育成の追い風となる先鋭教材として活用が期待されている。

■デジタル人材育成目指し

 「temi」は株式会社大塚商会=本社・東京都千代田区=とクオリティソフト株式会社=本社・白浜町=が共創開発した、将来のデジタル人材育成を見据えた教材の中核として採用されたロボットで、全高約1㍍、重量約12㌔。搭載するAIにより自律走行と対話ができる性能を有している。周辺機器を含めてセット化した教材は世界標準に対して遅れている感が否めないデジタル人材育成の強化を目標としていて、大塚商会は昨年12月18日に企業版ふるさと納税の一環で教材10セットの寄贈を県へ申し出た。

 共創開発に関わるクオリティソフト株式会社の木皮享顧問(元県教員)によると、背景には文部科学省が将来戦略として力を入れるSTEAM(スティーム)教育がありその推進にも大きな前進をもたらすよう考えられているという。情報関係の授業でプログラミングや生成AIについて学び、探究活動において他の教科の学びと統合し教科横断的な発想で人手不足の解消や地域活性化など社会的な価値をロボットで創造する。GIGAスクールにより1人1台の情報端末配置などデジタル学習基盤が充実する中、2030年代にはさらに各普通教室へ1台の生成AI搭載ロボットが配置される見込みもあり、木皮顧問は「これまでの知識偏重型から応用力・探究力重視型へと教育が質的に転換する契機になる」とその状況を見据えて同校における先駆的活用を期待している。

■社会実装で課題に気付く

 ドローンを中核とした教材がプログラミングの完成を到達点とするのに対し、「temi」は社会実装できるロボットを文字通り実装して成果に対する客観的な評価を受け、気付いた課題の改善を考えるプロセスまで到達できる点を持ち味としている。

 国はSTEAM教育により各教科の学びを実社会での問題の発見と解決に生かす状況を重要視していて、この教材はその方向性に応える筋道を想定している。

 社会実装は教材を提供する株式会社大塚商会が考える利用方法の一つで、実際の利用の在り方については学校それぞれの実情に照らして判断を委ねるとしている。

■教材活用は次年度から

 串本古座高校は割り当てられた時点で生徒がすでに探究テーマを持って活動を始めていた状況もあり、活用は探究テーマを決めるタイミングとなる次年度序盤に始める予定。それまでは教員が教材研究を重ねて「temi」を最大限理解し、どのような活用が目指せるかを見極めるという。

 先行して割り当てられたロボットの2台は職員室、1台は校長室へ配置。校内環境の学習をさせつつ試験運用もしていて、県の了解を得て昨年11月に全校生徒へ導入を報告し同月実施の公開行事「探究ディスカッション」で試験実装して来校者を歓迎したところでもある。本年度寄贈された10セットは現在、桐蔭高校と串本古座高校へ3セット、海南高校と田辺工業高校へ2セットが割り当てられている。次年度も10セットの寄贈が予定され、4校への割り当て数は各5セットとなる見込み。

 串本古座高校は11月末現在、「temi」にできることの把握と校内で運用するに当たって必要な環境整備、次年度のカリキュラムへどのように絡めて生徒の学びに生かしていくかの検討を進めている。教材研究の中核を担う教務部長・雜賀弥一郎教諭は「台数が限られているので、総合的な探究の時間で『temi』を実装するアイデアをテーマに掲げる生徒が活用する状況を今後に期待している。校務や授業などの支援も見据えて次年度には生徒に身近な存在となるよう考えていきたい」と展望を語る。実装先はまずは常時教員の手が届く校内と考えていて、実装がどのような状況となるかを確かめた上で社会実装を目指していきたいという。

  □     □

多言語解説で職員を支援 社会実装されたロボット

 株式会社大塚商会は過去、企業版ふるさと納税で串本町へ防災用途の自律走行型支援ロボット「Mars(マーズ)」を寄贈。災害時に人手が不足する避難所での受け付けや案内を本来目的としつつ、平時もその機能を汎用(はんよう)して活用が図られている。

 そのうちの1台がトルコ記念館に実装されていて、タッチパネル操作で希望する案内を選択するとロボットが該当する展示場所まで自律走行で移動し解説を始める仕組み。日本語・英語・トルコ語の3カ国語に対応し、とりわけインバウンド(=訪日外国人観光客)来館時の外国語対応で秀でた力を発揮し職員による対応を支援している。

 対話かタッチパネル操作かで違いはあるが、社会実装のスタイルは酷似。「temi」が目指す先のいち手本となり得るロボットでもある。

(2026年1月1日付紙面より)

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母親と共に過ごす子どもたち。ラグが敷かれ、おもちゃが用意されている=2025年10月20日、紀宝町鵜殿の東正寺
地域 「ただ、ゆっくり、まったり」
ママがほっとできる場に
寺で子育て支援「茶話会」
 「孤独になりがちな育児中のお母さんがほっとできる場所をつくりたい」。紀宝町鵜殿の醫王山(いおうざん)東正寺(とうしょうじ)(片野晴友住職)で昨年8月から開かれている「赤ちゃんとお母さんの茶話会」は、片野智博副住職の妻・友美さんのそんな思いから始まった。

 境内のソメイヨシノが紅葉し、秋の色が濃くなった2025年10月下旬。本堂では0歳3カ月から2歳8カ月までの子どもと母親16組が紀宝町や新宮市から集まっていた。互いの子どもの話をしたり、用意されたお茶やお菓子で一息ついたり、マッサージで疲れた体をねぎらったり。子どもたちは母親のそばでごろんと寝転んだり、おもちゃで遊んだりしながら思い思いに過ごしている。

 この日は午前10時から正午までの2時間で開かれ、事前に希望した人には弁当屋の弁当を有料で用意した。昼食の手間を省いて「今日は楽をしてもらえたら」との思いからだ。

 友美さんは太地町出身。結婚を機に紀宝町鵜殿に移り住んだ。3歳の長男、もうすぐ1歳になる長女を育てている。

 初めての子育ては何が正しいか分からず神経質になったという。新しい土地に引っ越したばかりということもあり、顔見知りの人もほとんどいなかった。赤ちゃんと二人きりの時間を長く感じ、慣れない育児に気持ちが落ち込むこともあったが、そんな時、ママ友に声をかけてもらい、外出してみたら気持ちが軽くなった。「少し外に出るだけで、こんなに変わるんだ」と感じた。

 一般に1人目の子育ては初めての経験に悩みがちで、母親は孤独に陥りやすいといわれている。「お母さんがお菓子を食べながら、ただ、ゆっくり、まったりできる場所をつくりたい」。そんな思いから茶話会は始まった。

 開催時間中の出入りは自由で、子どもや家事の都合に合わせて何時に来て、何時に帰ってもいい。朝寝をする赤ちゃんもいるため、保護者が気軽に遊びに来られるように配慮。居住地にかかわらず参加できるようにしているという。

 9月の2回目からは「お母さんたちを癒やしたい」とゲスト企画を盛り込み、マッサージなどを有料で体験できるように。「わざわざ体のメンテナンスに行く時間をつくるのは大変ですが、こういう場ならたくさんのママさんがいるから、お互いに子どもを見守り合えるかなぁと思って」。

 参加した紀宝町の女性は「紀宝町子育て支援センターのグループLINE(ライン)をきっかけに参加しました。楽しかったです。入退室自由なので参加しやすい」。友人から東正寺で子育て支援の行事が行われていることを聞き、寺のインスタグラムをフォローしているという新宮市の女性は0歳10カ月の次女と初めて参加。「(茶話会と同じ時期から開催されている)バランスボールで初めてお寺の行事に参加しました。知り合いのお母さんと話せてリフレッシュできるし、新しい出会いもあります」と話す。

 友美さんは結婚前から観光に関わる仕事に就いていて、今は育児休業中。新しいことを学び、挑戦するのが好きな性格で、結婚前は仕事もプライベートも全力で取り組んできたが、子育て中の今は「頑張り過ぎないことを、頑張ろう」と心に留めている。仕事に復帰しても茶話会を継続していけるように策を考えているという。

 「お1人目の出産をしたママさんにもぜひ、来てもらいたいです。初めての育児で右も左も分からず、寝不足だったり、日中はワンオペだったり、結婚して新しい場所に引っ越して来られる方もいるかと思います。ママさん同士でお話しして、ただただまったりしてもらいたい」と願う。

(2026年1月1日付紙面より)

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