那智勝浦町下里にある「第五管区海上保安本部下里水路観測所」は12日をもって一般公開を終了した。最後の公開日には56人の天体愛好家らが訪れ、「人工衛星レーザー測距(SLR)観測」の様子を見たり、施設を見学したりして、別れを惜しんだ。
下里水路観測所は1954(昭和29)年、勝浦水路観測所での観測を引き継ぐ形で設立され、船舶の航行に必要な地磁気や天体の観測を行っていた。現在は現存する海上保安庁唯一の水路観測所として、82(昭和57)年から開始したレーザー光を用いて人工衛星までの距離を計測するSLR観測を行っており、東アジア地域でこの観測を用いた最も歴史のある観測所となっている。
しかし、近年では国内で容易に高精度な位置測定ができるようになっていることから、今年12月末で観測を終了し、来年3月末をもって閉所することが決まっている。
SLR観測とは、地球を周回する人工衛星に向け、地上の装置からレーザー光を照射、人工衛星から反射した光が戻って来るまでの時間を計測することで、人工衛星と観測所の距離を測るもの。人工衛星の軌道や観測局の位置を精密に決めることができる。また得られたデータは航海に使用する海図の位置(緯度・経度)の基準である「世界測地系」の維持や日本列島の正確な位置決定にも用いられている。
近年は人工衛星によって地上の位置を計測する「全球測位衛星システム(GNSS)」や「準天頂衛星システム」などの整備により、国内で容易に高精度な位置測定ができるようになった。海保が実施する海図の刊行という目的においては、同観測所が担ってきた役割が代替可能になったことから、このたびの閉所決定となった。
参加者は「天候が不安だったが、最後の日に無事、極太の緑色のレーザーを見ることができて良かった」と話した。
(2026年9月16日付紙面より)
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