冬になると、食卓やこたつの上に自然と並ぶのが「ミカン」ですよね。
和歌山、特に熊野地方は全国有数のミカンの産地として知られています。皆さまも子どもの頃から身近にある果物だったのではないでしょうか。実は、このミカン「冬の健康を守る、天然のサプリメント」のような存在なんです!
ミカンには、風邪予防でおなじみのビタミンCが豊富に含まれています。中サイズのミカン2個で、1日に必要なビタミンC量の約7割を賄えるほど!(国立健康・栄養研究所)ビタミンCは免疫力を高め、皮膚や粘膜を丈夫にし、ウイルスの侵入を防いでくれます。さらに、オレンジ色の色素「β―クリプトキサンチン」には抗酸化作用があり、細胞を酸化ストレスから守る働きもあります(和歌山県農林水産総合技術センター)。この成分はミカン特有で、毎日2~3個食べると骨粗しょう症や生活習慣病の予防にも効果があると報告されています。つまり、ミカンは免疫力も高めてくれて、若々しくいられる力をくれる、素晴らしい果物というわけです。
ところで、皆さんはミカンを食べる時、どうやって皮をむきますか? 皮をむいた後に、房を覆う薄皮についた白い筋、あの筋をとても丁寧に取る方もいらっしゃいますよね。でも、実は〝白い筋〟にも大事な栄養が詰まっています。
あの筋や房を包む白い部分は「アルベド」と呼ばれ、食物繊維の一種「ペクチン」やポリフェノールの仲間「ヘスペリジン(フラボノイド)」が豊富です(農研機構・Journal of Agricultural and Food Chemistry,2015)。ペクチンは腸内の善玉菌を増やし、腸を通じて免疫を整える働きがあります。今はやりの腸活ですね。つまり、風邪をひきにくい体づくりには、ビタミンCだけでなく白い筋ごと食べることが大切なんです。
ヘスペリジンには毛細血管を丈夫にし、血流を改善する作用があります。手足が冷えやすい冬にミカンを食べると、体がぽかぽかするのはこの成分のおかげです。しかも、このヘスペリジンは、ビタミンCと一緒に取ると吸収率が上がる〝相乗効果〟もあります。つまり、筋を取らずに食べるほうが、ミカンの栄養をまるごと生かせるというわけです。
「白い筋は見た目がイヤ」「苦い」とつい取りたくなりますが、お子さんが「取って」と言った時には「この白いところは、風邪から守ってくれる〝ヒーロー〟なんだよ」と伝えてあげてください。きっと子どもたちも、ちょっと誇らしげにパクッと食べてくれるはずです。
さらに、ミカンの香りにも注目です。皮に多く含まれる「リモネン」には、リラックス効果や自律神経を整える作用があり(国立精神・神経医療研究センター2020)、皮をむいた瞬間にふわっと広がるあの香りがホッとするのは、実は科学的にも理由があるのです。
ぜひこの冬、家族でこたつに入りながら「白い筋も体にいいんだって」と話しながらミカンを食べてみてください。何げない時間こそ、立派な〝冬の食育〟になります。
(2025年11月16日付紙面より)
もっと見る
折たたむ
別窓で見る