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2021年01月30日
1 地元産野菜や魚味わう
 「学校給食週間」に熊野なまず登場  (新宮市 )

 文部科学省が定める「全国学校給食週間」(1月24~30日)に伴い、新宮市立の各小中学校では、地元産の野菜や魚などを使用した献立で給食を通した地元産業や食材・文化への理解を深める取り組みが行われている。

 日本の給食の歴史は1889(明治22)年にさかのぼる。戦争の影響などによって中断されたが、戦後の食糧難による児童の栄養状態の悪化を背景に、学校給食の再開を求める声が高まった。

 そんな中、1946(昭和21)年に米国のアジア救援公認団体(LARA=ララ)から給食用物資の寄贈を受け、翌年1月から学校給食が再開。同年12月24日に東京都内の小学校でLARAからの給食用物資の贈呈式が行われ、以来この日が「学校給食感謝の日」に。

 50(昭和25)年度から、学校給食による教育効果を促進する観点から、冬休みと重ならない1月24日から30日までが学校給食週間と定められ、全国では学校給食の意義や役割について考える機会にとさまざまな活動が行われている。

 新宮市では、好ましい人間関係を育み、良いマナーで気持ちよく食事をし、協力し合うことの大切さを指導しており、給食という生きた食材を通して正しい食事の在り方を指導している。

 王子ヶ浜小学校(山本眞也校長)では週間中の28日、市の第三セクターである新宮港埠頭株式会社(小池㬎二(けんじ)社長)が同市木ノ川の養殖場で完全養殖を手掛ける「熊野なまず」のフライが献立に初登場。

 「熊野なまずは熊野の山から流れるきれいな水を使って、卵から大人になるまで新宮市の池で育てたなまずです」などと説明を受けた児童らは「おいしい」と感想を口にしながら地元産食材への関心を深めた。

 市内の学校では、熊野なまずの他にも地元産の小松菜や鯨(和歌山県提供)などを使用したメニューが登場している。

(2021年1月30日付紙面より)

「熊野なまず」の説明を受けつつ舌鼓を打つ児童ら=28日、新宮市立王子ヶ浜小学校
2021年01月30日
2 税を意識するきっかけ得る
 古座小6年、租税教室参加  (串本町 )

 串本町立古座小学校(貴志純子校長)の6年生13人が28日、租税教室に参加し税制度を意識するきっかけを得るなどした。

 この教室は、新宮・東牟婁租税教育推進協議会が新宮税務署管内の教育委員会や学校に呼び掛けて実施。税務署や市町村税務課の職員、税理士や納税協会職員といった税制度に関わっている人材を外部講師として派遣し、児童や生徒が税制度を考える機会を学校の希望に応える形で届けている。

 串本町は町立小中学校計13校が例年受講し積極的な姿勢で感謝を受けた経緯がある自治体だが、本年度に限ってはコロナ禍の情勢に伴い実施は学校によってまちまち。そのような状況の中、古座小は6年生を対象にして開くことを同協議会に希望し、同署の宮澤拓哉・国税調査官を迎えて参加するに至った。

 宮澤さんは児童に身近な消費税を振り返って税金への関心を引きつつ、映像教材(国税庁作品「マリンとヤマト 不思議な日曜日」)を上映。その内容の振り返り発表や、平均的な学校を一つ建てるのに必要な予算(約13億円)、小学校入学から高校卒業までの間に使われる1人当たりの税金の額(1125万円)を紹介するなどして税の大切さの実感を託した。

 坂井陽向君(12)は「税金のある世界は平和で楽しく過ごせそう」と税の印象を話し、ない世界でしなければいけないことを振り返りながら「税は必要だと思った」と考えを深めた。

(2021年1月30日付紙面より)

新宮税務署の宮澤拓哉さんと一緒に税について考える6年生=28日、串本町立古座小学校
金額の実感を養うため1億円見本の重さを体験する坂井陽向君ら
2021年01月30日
3 初詣期間終え総括 熊野本宮よみがえり委員会 (田辺市本宮町)

 田辺市本宮町の熊野本宮大社と本宮町商工会、熊野本宮観光協会で組織する「熊野本宮よみがえり委員会」(会長・名渕敬熊野本宮観光協会会長)は28日、同町の「世界遺産熊野本宮館」で第5回委員会を開き、新型コロナウイルス感染症対策として講じた今年の分散初詣について総括を行った。

 同委員会は、参拝者に対し「新しい生活様式の実践例」に基づいた神事の斎行などを提案するため昨年7月30日に設立。

 新型コロナ禍中における分散型の参拝や観光の在り方などについて協議を行っており、132年ぶりに旧社地「大斎原(おおゆのはら)」での祈祷(きとう)を行うなど、初詣に向けた取り組みを実施してきた。

 委員会開催に当たり、名渕会長はあいさつを述べ「関係機関の方々の協力で初詣期間を無事終えることができた」と感謝。

 顧問の九鬼家隆・熊野本宮大社宮司は「県外の方は戸惑うこともあったと思うが、事故もトラブルもなく正月期間を終えることができた」と参拝者や関係者の協力に感謝し「本殿と大斎原が一体であると、改めて多くの人に知っていただけたと思い意義のある取り組みだった」と述べた。

 総括では、名渕会長が観光協会の立場から、昨年度約3800件だった宿泊予約が約6割の2100件であったことなどを報告。

 副会長の渕上太志・本宮町商工会長は分散参拝に伴う「初詣特別版熊野本宮まちめぐりマップ」の制作に関して「全体的にはいいものができたと思っている。今後もマップを活用し、まちなかを歩いてもらえるように提供できれば」と述べ、町内に設置した絵馬掛けについて「今後もまちを巡るポイントとしてそのまま維持できれば」と希望した。

 委員やオブザーバーからは「車の流れも少なく分散参拝という意味では結果的に良かったのでは」「分散の取り組みにおいて一定の成果が得られた」などの意見があった。

 昨年の三が日、同大社には約47万人が訪れたが、今年の初詣客は約8万人だったという。九鬼宮司は「同大社ではこれから春の大祭(本宮祭)も控えている。祭りだけではなく、観光協会、商工会の行事の際にも一致団結して本宮町を盛り上げていけたら」と呼び掛けた。

(2021年1月30日付紙面より)

正月期間を終え総括を行った=28日、田辺市本宮町の世界遺産熊野本宮館
2021年01月30日
4 自分たちで町をきれいに
 宇久井中学校が地域清掃  (那智勝浦町 )

 那智勝浦町立宇久井中学校(坊信次校長)は28日、地域の清掃活動を実施した。美化部を中心に全校生徒63人が手分けし、宇久井ニュータウンや里地区、湊地区、宇久井海岸のごみを拾った。

 夏季休業前後に生徒有志で実施していた学校周辺の清掃活動から始まり、2015年からは全校生徒で取り組んでいる。

 開始に当たり坊校長は「今日の清掃活動は、自分たちの手で地域をきれいにするだけでなく、普段から学習や体験でお世話になっている地域の方々に恩返しをする目的もある。元気にあいさつし、頑張っている姿を見せてほしい」と話した。

 生徒たちは縦割りの6班に分かれて町を歩き、道端に落ちている菓子袋や食品トレー、空き缶、海岸に漂着したプラスチックごみを拾った。

 多かったごみは空のペットボトルで、町指定のごみ袋で可燃ごみが7袋、缶が2袋、瓶が1袋集まった。参加した教職員からは「去年よりも量が増えた」という声が聞かれ、今後の取り組みへの課題としていた。

(2021年1月30日付紙面より)

宇久井海岸の漂着ごみを清掃=28日、那智勝浦町宇久井
2021年01月30日
5 入賞作品14点を発表  第1回紙上短歌大会  (串本町 )
2021年01月30日
6 クレーンが転倒  新宮紀宝道路の建設現場で  (紀南河川国道事務所 )
2021年01月30日
7 懲戒処分などに対し説明  情報不十分に謝罪も  (新宮市 )
2021年01月30日
8 入学に向け一緒に遊ぶ  5歳児と1年生の交流会  (太地こども園 )
2021年01月30日
9 議長席で将来の夢を発表  勝浦認定こども園が社会見学  (那智勝浦町 )
2021年01月30日
10 令和7年度から建設を予定  東紀州広域ごみ処理施設  
2021年01月30日
11 正月の観光入込客数減少  三重県内主要20施設で調査  
2021年01月30日
12 木本総合2倍、紀南1・88倍  三重県立高校前期選抜の志願状況  
2021年01月30日
13 ズボンも選べるように  来年度から女子生徒の制服で  (矢渕中 )
2021年01月30日
14 お悔やみ情報
  
2021年01月30日
15 ママも子どもも笑顔になる「疲れない食育」
 【第29回】毎日手作りじゃなくていい  

 毎日のご飯作り。はっきり言って、面倒ですよね。家にいるときはほとんどキッチンにいるという方も多いと思います。でも、そのご飯、本当に毎日頑張って作らなくちゃいけませんか? ほとんどのお母さんは、食事作りを子どものために頑張っていますよね。「手作りのものを食べさせてあげたい」「栄養を考えた献立にしてあげたい」など子どもたちを健やかに育てるための義務だと思って頑張っている方がほとんどだと思うのです。

 でも、この義務感がかえって食育上、問題を起こす可能性があるんです! 母親と父親の調理態度が、子どもの食態度にどう影響するかを調べた研究があります。その研究にこんな結果が書かれています。「『母親の調理頻度』のβ値は、男女ともにマイナス方向に有意であり、特に男子で大きい。すなわち、『母親の調理頻度』が高いほど、子どもは『共食の雰囲気』を楽しいと感じられなくなり、その傾向は男子で強い」(日本家政学会誌「母親と父親の調理態度が、家族の共食と中学生の調理態度に与える影響」、2007年)。

 驚きませんか? 料理を作れば作るほど、子どもたちにとって食事が楽しくないものになる!ってことですよ?「何のために頑張ってきたんだ」ってなりますよね。これはなぜなのか、それは、母親が調理をすればするほど義務感や負担感を強めてしまい、それを子どもが感じ取って「共食の雰囲気」の良さを阻害するからだそうです。毎日の料理に疲れて嫌々ご飯を作ってたこと、子どもにバレていたんですね。そのせいで、食卓が楽しくないものになっているんです。確かに、お母さんがいくら自分のためにお料理してくれても、お母さんが疲れていて機嫌が悪いと、おいしいとは思えなくなってしまいますよね。子どもたちはそんなお母さんの雰囲気を敏感に感じ取っているんです。

 要するに、私たち母親も、気分良く作れるときだけ作ればいいんです。いやだな~めんどくさいな~と思うときはやめた方が子どものためなんです! 外食をすることや、お総菜を買うこと、デリバリーに頼ることに、罪悪感は一切必要ありません。むしろ、その方が笑顔でいられるなら、子どものためになるわけです。子どもは、笑顔のお母さんが大好きです。疲れたとき、イライラしているとき、そんなときは思い切って、誰かが作ったものを「おいしいね~!」と笑顔でいただきましょう!

 そうすることで、子どもは安心するのかもしれません。

 お料理に疲れたら、作らないのが子どものため! これを合言葉に、笑顔で過ごせる毎日をお送りください。

(2021年1月30日付紙面より)

2021年01月15日
16 ゲームで新たな防災学習 市野々小で県内初の実施 (和歌山県)

 和歌山県土砂災害啓発センター(坂口隆紀所長)は13日、那智勝浦町立市野々小学校(中西健校長)で「防災RPG(ロールプレイングゲーム)土砂災害が発生したとき」を用いた県内初の防災学習を実施した。オンラインで参加した開発者である和歌山工業高等専門学校専攻科エコシステム工学専攻(辻原研究室)1年の西萩一喜さん(21)=串本町出身=のアドバイスの下、5・6年生9人はゲームという新たな形で防災への学びを深めた。

 同センターによると、地震の避難に関する防災RPGを制作・研究していた辻原研究室の辻原治教授に同センターが土砂災害用ゲームについて提案したところ、防災に興味を持っていた西萩さんの紹介を受けたという。

 西萩さんはゲーム開発のためにオンラインでの会議を実施し、同センターを数度訪れるなどして内容を精査。同センターも土砂災害に関する資料や情報を提供し、昨年12月に完成した。

 ゲームは大雨警報や避難勧告が発令された中、主人公が自宅から避難所までたどり着けばゴール。さまざまな場面で災害に関する知識や正しい行動についての選択が問われる内容となっている。正解に応じて点数が獲得でき、実際の土砂災害の動画なども映し出される。

 児童は2人一組でパソコンに向かい、相談しながらゲームを進めた。参加した中村幸幹くん(6年)は「いつもやっているゲームは学ぶことが少ない。このゲームは分かりやすくて楽しく学ぶことができた」。

 中西校長は「受け身の教育ではなく、ゲームを通して主体的に学ぶことができたため、新たな可能性が広がっていくと感じた」と話した。

 西萩さんは「今後はゲームをきっかけに家族と土砂災害について話し合い、知識を共有してほしい」と述べ、坂口所長は「楽しく学んでくれて良かった。児童や先生にもアンケートを行い、課題解決につなげていく。今後は県内各地でゲームを活用していきたい」と今後の展望を語った。

 なお、ゲームは同センターでもプレーすることができる。問い合わせは和歌山県土砂災害啓発センター(電話0735・29・7531)まで。

(2021年1月15日付紙面より)

ゲームで防災を学ぶ児童=13日、那智勝浦町立市野々小学校
開発された防災RPG
2021年01月15日
17 守られ平等であるべき
 人権擁護委員委嘱状伝達式  (和歌山地方法務局 )

 新宮市緑ヶ丘の和歌山地方法務局新宮支局(山田勝久支局長)で13日、人権擁護委員の委嘱状伝達式が行われ、山田支局長が村田美織さん(64)=那智勝浦町下里=に委嘱状を手渡した。任期は今月1日から3年間となる。

 人権擁護委員は、地域住民の中から人権問題に理解や熱意のある人が市町村長の推薦を受けて法務大臣から委嘱される。さまざまな分野の人が地域の中で人権思想を広め、住民の人権が侵害されないよう配慮する活動を続けている。1日現在で同市では9人、那智勝浦町は6人、全国で約1万4000人が委嘱されている。

 委嘱状を受け取った村田さんは「人権は、全ての人が守られ、平等であるべきもの。コロナの収束を迎えれば保育士として勤めていた経験を生かし、絵本などを通じて子どもたちに人権の大切さを少しでも伝えていければとも思っています。初めての活動で分からないことも多いですが、先輩委員の方々から学び任期を全うしていきたい」と決意を述べていた。

 全国人権擁護委員連合会では昨年、新型コロナウイルス感染症が全国的に拡大し緊急事態宣言が発令される中、5月に「差別をなくして新型コロナウイルス感染症のまん延を乗り越えよう」と緊急宣言。「このような時期だからこそ、個々の自覚した行動が求められている。一人一人は弱い人間でもみんなで助け合って支え合えば、この危機を乗り越えることができるのでは」と提唱した。

(2021年1月15日付紙面より)

山田勝久支局長(左)から委嘱状を受け取る村田美織さん=13日、新宮市緑ヶ丘の和歌山地方法務局新宮支局
2021年01月15日
18 交流の印象伝え締めくくる
 飯田高校と最終の遠隔授業  (串本古座高校 )

 県立串本古座高校普通科グローカルコース3年生が13日、石川県立飯田高校総合学科3年生と最終の遠隔交流授業に取り組んだ。

 飯田高校は石川県の能登半島の先端に位置する学校。他地域に関わることで取り組む地域学への刺激が得たいという思いで紀伊半島の先端にある串本古座高校に交流を申し入れ、同校も生徒の取り組みに対する客観評価を得て学びを深められると意義を見いだして承諾し、実交流としてウェブ会議システムを使ったこの授業に取り組み始めた。

 昨年6月に初実施し、以降も回を重ねて互いが取り組んでいる地域学の内容を伝え合い、時には相手の地域学を深めることに協力し合うなどしてきた。最終となったこの日は前後半の2部構成で実施。前半は同席した外部講師のために互いの地域の特色と地域学の経緯や学んだ事柄などを発表し、後半は飯田高校側の外部講師・圓山晃歩(えんやま・あきほ)さんと串本古座高校側の外部講師・宇井晋介さんが最終講義をしこの交流を締めくくる生徒に期待する事柄を託すなどした。

 圓山さんは副業として半島同盟を運営するメンバーの一人。その活動内容や取り組む意味を紹介し、両校生徒がこの授業で追い求めたように半島同盟も他地域との違いを知って自分の価値を知り、それが今後の可能性につながるから取り組んでいるとして両校生徒の取り組みに共感した。

 宇井さんは元・串本海中公園センター水族館館長で現・南紀串本観光協会事務局長。串本の海の特色と生物多様性を生かす観光業の成り立ちを体験型観光の主流化という時代変遷も踏まえながら説明し、その領域の一先駆者として▽「何もないところ」はない▽物事をいろんな方向から見てみる▽考えるだけでは考えていないのと同じで例え小さくても形にすることが大事▽継続が最も大切―などの発想を生徒に託した。

 最後に両校代表を1人立ててこの交流の印象を発表。飯田高校側は「自分から進んで調べようとしなかったことをこの交流で知ることができ、それによって自分たちの地域をより深く知ることができて良かった」、串本古座高校側は「(交流を通じて)串本ではしていないまちづくりなどを勉強でき、今後自分たちの地元を盛り上げていくために活用できたらいいなと思った」と伝え合って交流を締めくくった。

(2021年1月15日付紙面より)

両校生徒の発表を経て最終講義に臨む=13日、県立串本古座高校
2021年01月15日
19 終息や商売繁盛など祈願
 大泰寺で大般若祈祷会  (那智勝浦町 )

 那智勝浦町下和田の古刹(こさつ)、定光山大泰寺(西山十海住職)で13日、西山住職ほか、同町や太地町の9人の住職が出仕して「大般若祈祷会」を営んだ。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から恒例の餅まきは中止となったが、境内や本堂には約130人が訪れ参拝した。

 法要ではマスク着用やアルコール消毒、換気など新型コロナウイルス対策を徹底し、住職の出仕も2町にとどめた。

 住職らは全600巻の大般若経典を左右に波打たせながら一気に読む転読を行い、厄払いや家内安全、商売繁盛などを祈願した。

 西山住職は「早期のコロナ終息と多くの方々が元通りの生活に戻れるように心に念じながらご祈とうさせていただいた。今年は皆さまが幸せをかみしめることのできる一年になることを願っています」と語った。

 なお、昨年末から無料で授与されていた疫病封じの床浦大明神のお札を持ち帰る参拝者の姿も多く見られた。

 同寺は伝教大師により1200年前の平安初期に創建された桓武天皇勅願道場と伝わる。薬師堂は関南薬師の第一霊場として昔から近隣の人々の信仰を集めてきた。

 この日もご開帳された本尊の薬師如来像(国重要文化財)は1156(保元元)年の作。その優美な姿に引かれ、例年のご開帳の際は大阪や東京などからも参拝者が訪れている。

(2021年1月15日付紙面より)

大般若経典を転読し商売繁盛などを祈願した=13日、那智勝浦町の定光山大泰寺
2021年01月15日
20 串本JFCが県大会へ
 チビリンピック東牟婁予選  
2021年01月15日
21 大規模災害に備えるため  災害備蓄保存用パンを販売  
2021年01月15日
22 山頂からの絶景を堪能  山歩き部会で「鮒田富士」へ  (紀宝町 )
2021年01月15日
23 野外焼却行為などに注意  消防本部が呼び掛け  (那智勝浦町 )
2021年01月15日
24 報告数、昨年の千分の1以下  インフルエンザ発生状況  (厚生労働省 )
2021年01月15日
25 入会者にオリジナルマスク配布  日本ヤタガラス協会  
2021年01月15日
26 紀州まぐろ節で町を元気に  歌手の南順子さんが披露  (那智勝浦町 )
2021年01月15日
27 税の使い道はどう決める?  勝浦小学校で租税教室  (那智勝浦町 )
2021年01月15日
28 グラウンドゴルフ愛好者170人競い合う 潮岬で新年初打ち大会 (串本町)
2021年01月15日
29 お悔やみ情報
  
2021年01月01日
30 わがらのまちや!いっしょにやろらよ 人生100年時代。生涯現役社会の実現目指し (「新宮市生涯現役促進地域連携協議会」の取り組み)

 「わがらのまちや! いっしょにやろらよ」と唱(うた)う新宮市生涯現役促進地域連携協議会が厚生労働省「生涯現役促進地域連携事業」の採択を受けて約1年半が経過した。折り返し地点を迎えた今、これまでの歩みを振り返るとともに、残り約1カ年に懸ける関係者らの声を届ける。

  □     □

■厚労省「生涯現役促進地域連携事業」



 「人生100年時代」が叫ばれ、少子高齢化が進展し、労働力不足が問題となっている昨今。高年齢者雇用安定法で企業に65歳までの雇用確保が義務付けられており、企業を退職した65歳以降の高年齢者の多様な就業機会の確保が今後の重要な課題となっている。

 そんな中、働く意欲のある高齢者が能力や経験を生かし年齢に関わりなく働くことができる社会を目指し、国は2016(平成28)年4月に「生涯現役促進地域連携事業」を創設した。地方自治体が中心となって地域の関係機関で組織する「協議会」が、高年齢者の活躍の場を広げるためのさまざまな活動を行うもの。厚生労働省の公募に対して手を挙げた自治体が選定され、委託事業として活動を展開していく。事業実施期間は最大で3年度間。

 「『癒やしと蘇(よみがえ)りの地 熊野・新宮』におけるアクティブシニア生涯現役宣言〜わがらのまちや!いっしょにやろらよ〜」をタイトルに掲げて名乗りを上げた新宮市は19(平成31)年3月29日に厚労省に採択。和歌山県内で事業委託を受けた初の自治体となった。

 同(令和元)年6月に事業開始。同協議会ではこれまで各種生涯現役セミナーや中高年齢者向けの合同企業説明会などの開催、相談窓口の設置、同協議会への登録呼び掛けなどを通して中高年齢者の雇用の促進と生きがいづくりの場への参加などの支援を実施。20(令和2)年10月末現在で42人が登録し、これまで13人の就業希望者の雇用を見守ってきた。

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■市生涯現役促進地域連携協議会



 「生涯現役促進地域連携事業」の採択を目指し、新宮市生涯現役促進地域連携協議会(会長・田岡実千年市長)を設立したのが18(平成30)年12月6日。市と新宮商工会議所、(公社)市シルバー人材センターで構成される。

 「僕たちだけで計画を作ってやっていくわけにはいかない。高年齢者の方々に、自分たちが地域を盛り上げていこうという思いを持っていただきたいと強く思いました」。当時、商工観光課係長だった谷口洋平・企業立地推進課係長は事業タイトル「わがらのまちや! いっしょにやろらよ」に込めた思いをそう語る。

 採択までの道のりは平たんではなく、先立って採択を受けた近隣県の自治体に調査に赴き、何度も計画書を手直し。観光分野における地域の伝統や文化を次世代に継承していく担い手、そして農業・介護分野における人材不足を鑑み、重点業種を「観光」「農業」「介護」分野に設定し、「高年齢者の経験と技術の活用促進により若年層の人材不足を補いつつ、地域全体で生涯現役社会の実現に取り組む」を構想の核とした。

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■笑顔が語る「生涯現役宣言」



 新宮市は晴れて、全国14団体の一つとして平成31年度開始分の実施団体に採択。初年度には高年齢者を対象とした就労意識調査や企業向け雇用ニーズ調査、就労・社会参加情報提供サイトの開設などの事業を展開した。

 そして20(令和2)年、「野菜づくり体験~野菜を育てるには~」を皮切りに生涯現役スキルアップセミナーを開催。以降、「英語を学んで外国人におもてなし」「川舟下り船頭を知ろう!」「御燈祭(おとうまつ)り『たいまつづくり体験』」「郷土料理を作ってみよう」など、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、6回のセミナーを実施した。

 真剣な表情で積極的に学びを深めようとするセミナー参加者の姿からは就労と社会参加に対する喜びが伝わってくる。喜びを参加者同士で分かち合おうとする笑顔こそが「生涯現役」の証しだ。

 「コロナ禍の中、事業を行っていくのは困難。しかし、観光、農業、介護分野に重きを置き、生きがいづくりのきっかけになるようなさまざまな活動を展開していけたら」と同協議会事務局担当の西利行さん。21(令和3)年はフィールドワーク型の観光ガイド育成セミナーの開催も視野に入れているという。

 残り約1カ年。同協議会は高年齢者の就労ニーズにマッチする事業所につながりやすい環境づくりや各種セミナーの開催などを通して、さらなる生涯現役社会の現実化機運を醸成していく構えを示している。

(2021年1月1日付紙面より)

2021年01月01日
31 町内外から振興の波寄せる
 サイクルツーリズム活発化  (古座川町 )

 古座川町域のサイクルツーリズム振興が近年、にわかに活発さを増している。喫緊では古座川町が2町1社と連携協定を締結。今年は広域協力の拡大が注目される一年となる。

 サイクリング王国わかやまの舞台となるルート「WAKAYAMA800」の環境整備がいよいよ県南部に達し、昨年は町域でも自転車専用の青い道路標示や案内板類が整った。ルートの進行方向と分岐点を示すもので、これをたどって駆けるサイクリストを見掛ける機会も増えてきた。

 この人流を大きくつかみにかかるのがすさみ町。年次のサイクリングイベント「ライドオンすさみ」を2017年に立ち上げ、第2回から古座川町域をルートに組み込んだことで500人規模の参加者が同町域を通過するようになった。

 町内の振興着手も早く、古座川町観光協会(須川陽介会長)はおととし秋からクロスバイク(スポーツ自転車の一種)のレンタル事業を開始。愛好者だけでなくスポーツ自転車をまだ持たない初心者も気軽にサイクルツーリズムに親しめる状況を提供している。昨年は推奨3コースを設定し、道の駅一枚岩などと協力して道の駅虫喰岩以外でも乗り捨て(レンタル終了)できる状況を整備。期間限定のスタンプラリーも実施して利用を促している。

 これら上昇機運を素地にして昨秋、古座川町は先駆的にEバイク(電動アシスト付きスポーツ自転車)を運用するすさみ町、上富田町、南紀白浜エアポートの3町1社で連携協定を締結。スポーツ自転車の町域をゆうに越える行動圏を広域連携でしっかりと受け止めるための協力の根拠を宿した。

 川釣りにキャンプ、そしてサイクリングとレジャー要素を帯びた交流人口の幅が広がる古座川町。これらの人流を経済効果につなげる仕組みづくりはまだまだこれからといった状況だが、町外からの注目の勢いは着実に高まっている。

 サイクルツーリズムの潮流を引き込む最大戦力となっている同協会の須川会長は「信号のない町内はサイクリング向きと思い力を入れてきたが、ようやくここまできたかという心境」とコメント。今年以降の展開として「関西圏、次いで関東圏と誘客が広がる今後を期待し、グランピングなど滞在環境の充実やレンタル時の商品券付与、ツアー提供など地元経済に結び付ける策を団体連携で形にすることも進めたい」と思いを巡らせている。

(2021年1月1日付紙面より)

スポーツ自転車で地質資源巡り。古座川町観光協会はレンタル事業でサイクルツーリズムに親しむ機会を提供中(古座川町観光協会提供)
サイクルツーリズムで連携協定を締結。今後の協力の具体化が注目される(古座川町役場地域振興課提供)
2021年01月01日
32 ショーホエルとM地が歩く
 太地の魅力再発見ゆるツアー  

 取材で訪ねる太地町。捕鯨や移民の町として有名だが、近年ではクジラの学術研究都市を目指し、着々と計画が進められている。

 町立くじらの博物館はもちろん、町の玄関口である道の駅たいじ、古い町並みや管理の行き届いた多くのトイレ、町の各所にあるベンチなど魅力はさまざま。本当に素晴らしい町だと思う。

 この町の魅力をさらに知りたい思いから同町のガイド団体に協力を要請し、「ゆるい」魅力再発見ツアーを敢行した。

  □     □

太地を知りたい!



 前述の通り、知ったふうに述べるM地だが、名所やまちなかを全て知り得ているわけではない。

 「行ってみたい。知らない太地を知りたい! 誰かM地に太地を教えてください!」

 懇願の声を上げた途端、「仕方ないジオ」とあの甲高い声が聞こえる。

 声の方向を振り向くと、黒くてモサモサした見た目が有名で、ゆるキャラグランプリにも出場経験のある「ソレ」がそこにいた。

 そうです。同町唯一のガイド団体「たいジオ」の「ヨーホエル」だ! 3~4年ぶりに見た彼はなぜか小さくなっていた。聞くところによると、「ソレ」らは「ショー(小)ホエル」という名前らしい。この日はショーホエルと「たいジオ」の久世(くせ)滋子会長、鷲津恵美さんが、M地の身勝手な申し出を快く引き受けてくれた。さあ、ゆるツアースタート!太地を知りたい!

  □     □

イルカ…見えない



 まずは同町が取り組む「森浦湾鯨の海構想」の舞台となる森浦湾に設置された鯨類の観察が楽しめるという「海上遊歩道」へGO!

 検温、消毒、受け付けを済ませ、救命胴衣を装着するも時刻は日が陰り始めた午後4時前。ガーン…「見えない」。

 来るのが遅かったのか、寒さのためかお目当てのイルカは見えず…。いつもなら見えるのに…。「もしかしてこの生物のせい?」と心の中でショーホエルに八つ当たりするM地。気を取り直して次だ!

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燈明崎の隠れスポット



 次に案内していただいたのが燈明崎(とうみょうざき)。あれ、それって有名な名所では…と口から出そうな言葉を飲み込み、久世会長たちについて行くM地。すると、階段を下りきらず、横の道にそれていく。

 「地元でも知る人の少ない、大敷の見張り台です」と久世会長。目の前には広く海を見渡すことのできる高さ約3㍍の石造りの見張り台が現れた!

 燈明崎の階段を下りきった時、姿の見えないショーホエルの声が聞こえ、「柵が設置されている下を見るジオ」と叫ぶ。下を確認すると、歴史ある石積みが確認できた。

 「400年くらい前の石積みジオ」とショーホエル。M地が400年の根拠を問うと「きっと400年くらい前ジオ。言い続けていれば本当になるジオ」と開き直る。久世会長は「400年前から追い込み漁があったはず」とその理由を補足する。

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防空壕だったの?



 「太地に防空壕(ごう)あるの知らないですか」と鷲津さん。M地は同町を度々、訪れているがそのようなものを見たことがなかった。

 「あれ? これ知ってる」とM地。町立太地小学校付近にある穴ぼこだったとは。M地はこの穴ぼこはごみの一時保管所か、捕鯨に関する道具を置く場所だと勝手に想像していたのだが…。

 「これは防空壕ジオ。進むジオ」と姿は見えないが声が響く。仕方なく光源のない真っ暗な穴に入ることに。スマートフォンのライト片手にどんどん進んでいく鷲津さん。暗いのが苦手(文句ばかり)なM地はそろりそろりと後を追い掛ける。

 それにしても意外に穴が深い。数㍍進んだ所で一気に広くなった。なるほど、やはりここは防空壕だったのか。

 暗闇が怖いM地は無視してさっさと外へ。その後、久世会長は太地小に続く道の地面に無数に開いた穴を説明してくれた。

 「昔はこの道の半分は川だった。今は道になっているけど、下は暗渠(あんきょ=地下水路)になってます。この穴は雨水などを暗渠に逃がすためのもの」。鷲津さんは「太地は暗渠の町。避難路も多い」と話した。

 「津波が来た時ここで波が止まったジオ。ここで記念撮影するジオ」と突然現れたショーホエルが言った目の前には波切神社があった。

 なぜか背中のむず痒(がゆ)さがなくなった気がしたM地はそう言うならと仕方なく記念撮影。その際の様子がなぜか、たいジオのフェイスブックに掲載されているので驚いた。

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今後の「たいジオ」の活動は



 鷲津さんは「古式捕鯨は終わったが、その役割分担が名字になり、住んでいる人たちが歴史をつないでいる。その価値がすごい」。久世会長は「うまく言えないが、太地町はすごく住みやすい」とそれぞれ町の魅力を語る。

 ジオパークガイド研修で知り合ったメンバーが集まり、2014年に「たいジオ」は結成された。同町はもちろん、熊野地方の良いものをPRするためやジオの素晴らしさを子どもたちに伝えたい思いで活動している。

 活躍の幅が広がっていったそんなさなか、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった。現在は実質的に活動を休止しているという。久世会長は「そもそも大きな構想があるわけじゃない。そのうちにまたユルく活動が始まると思う」。

 M地はずっと気になっていた。いつもあちらこちらで出現していた大きいヨーホエルを見掛けない。聞きづらいが勇気を振り絞り聞いてみた。

 鷲津さんは「ヨーホエルは丘クジラ界が退屈で逃げ出して太地に居候していた。どこかへ逃げ出したか、誰かに捕獲されたのでは」と話す。

 再びどこからともなく現れたショーホエルは「気が向いたらひょっこりと帰ってくると思うジオ」とつぶやいた。その時なぜか背中が軽くなったM地であった。

(2021年1月1日付紙面より)


イルカが見えないのはこいつのせい?
見張り台の上で案内する、恐れ知らずの鷲津さん
適当なことを口にするショーホエルたち

ショーホエルいわく、約400年前の石積み
防空壕だったの?
暗渠の穴が所々にある太地のまち

2021年01月01日
33 記憶から記録へ
 住民らが天満の地図作り  (那智勝浦町 )

 「昔の天満は栄えていた。床屋さんもいっぱいあって、正月前は大八車を引いて二河から買い出しに来た人もいた」—。

 そう語るのは「なちかつ古道を守る会」(太田耕二代表)の会員や天満地区(以後、天満)在住者、当時の天満を知る人たちだ。一同は互いの記憶を頼りに天満が栄えていた1960(昭和35)年前後の天満の地図を作成することを誓った。

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■天満の地図を作ろう

 同会のメンバーらは、天満を巡った際に過去の記憶が多くよみがえり、以前の地区を深く知りたくなったという。しかし、天満の詳細を記した文献や資料がほとんどないことに気付く。

 「ないなら記憶を頼りに後世に残す地図を自分たちで作ろう」と同会らの「天満の地図作り」がスタートした。

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■天満出身者やゆかりのある人が集まる

 同会では地図作りに最も必要なピースとなる「記憶」を集めるために、天満在住者や出身者、ゆかりのある人物、興味のある人に声を掛け、昨年11月16日に一同が集まった。

 この日、参加したのは同会の太田代表、中村明代さん、榎本幸子さん、引地裕子さん、柴田紀男さん・三弥子さん夫妻、市野々地区出身で那智中学校に通学した地庵(じあん)晋司さん、天満地区の越水政憲さん、汐﨑裕さん・せつ子さん夫妻。

 過去の思い出話に花を咲かせながら地図作りは進められた。

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■皆で話し合い進める

 「那智参詣曼荼羅(まんだら)絵図には天満の天神社と那智川河口にある船着き場の大黒船が描かれている」「日本地図を作った伊能忠敬(いのう・ただたか)が訪れた際は人数が多かったので分宿した話も残っている」「天満にブリキ屋があったの」「天神社は629年を超えるはず」「昔バスが通っていたなんて信じられない」「きれいな水路が豊富で、そこで泳いだり野菜を洗った」―。

 一同は互いの記憶を出し合い、相談しながら現在の天満の地図の上に過去にあった店などを記した。

 「田かき(代かき)がよく開かれていた。田んぼを平らにならすためのものだが、牛を飾って競争させりしてた」と懐かしみながら次から次へと地図を埋めていった。

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■参加者の思い

 那智中学校の通学当時の印象が色濃く残る地庵さんは「天満は大都会のようだった。各種専門の店がずらりと並んでいた。盆や正月の節季には一張羅に着替えた母と天満へ買い出しに行ったのを思い出す。今の子どもたちには想像がつかないと思うが、この地図はその証拠であり、貴重な資料」と振り返った。

 地元の越水さんは「昔を思い出すことができた。地図の完成が楽しみ。天満の人には見ていただきたい」。

 汐﨑さん夫妻は「できるだけ記憶にあることを伝えた。こういったものを作っていただきありがたい。若い方々にも完成した資料を見て天満に関心を持っていただけたら」と話した。

 太田代表は「古道を守る会は『歴史と文化と環境を守ろう』をモットーとしている。人によって記憶が違う部分もあるため判定はできないが、昔の天満の古い町並みを再現したかった。天満が栄えていたころの状況を今の人たちに知っていただけたら」と語った。

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■後世に残す

 旧那智町と旧勝浦町、宇久井村、色川村が合併し現在の那智勝浦町が誕生したが、それ以前の天満は店がひしめき、地区内外から多くの人々が買い物に訪れ活気にあふれていたという。

 「それらの事実や当時の様子を後世に伝えたい」という思いで始まった地図作りは同会を中心に進められ、11月26日に最終確認を行い、紙ベースの地図が完成した。

 その後、改良を加えて当時や現在の天満の写真とともに16ページ、B5判の冊子としてまとめられ▽概要説明▽那智参詣曼荼羅絵図▽天神社▽昭和35年当時の那智中学校周辺の航空写真▽上天満(かみてんま)区の地図▽下天満(しもてんま)区の地図▽地図作りに関わった人々の紹介―という内容となっている。

 冊子完成後は同町立図書館や町教育委員会に寄贈するという。なお、弊社の新年号の締め切りの都合上、製本された冊子は掲載できなかった。

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■記憶から記録へ

 完成した地図は今後、どのような形でこの地域に残り、後世に引き継がれていくのかは現時点では分からない。地図はこれから時を重ね、手に取る人々によってさらに磨かれていくはずだ。

 情報伝達技術が加速し発達する現代。しかし、最新の機器で検索しようとも、住民一人一人の思い出や体験などの情報に触れることはできない。

 その貴重な「思い」や「時間」が集められたこの地図が「記憶」から「記録」へと変わる瞬間が必ず訪れるはずだ。

(2021年1月1日付紙面より)

完成した天満の地図はこの後、冊子となる
記憶の地図を作るため一同が集まる
思い出を出し合った
2021年01月01日
34 いよいよ運用の初年度へ
 民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」  (串本町 )

 串本町の北端、田原区内(一部那智勝浦町域を含む)で建設中の民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」。2021年度は工事が完了し運用が始まる初年度で、地域内外が待望する1号機打ち上げの瞬間もいよいよ目前に迫ってきた。

 国内では種子島、内之浦に続き3番目、世界では27番目にして初の民間設置となる同発射場。運用するスペースワン株式会社は一昨年に建設地を発表し、建設工事に着手した。浦神半島の付け根付近に射点を設け、国道42号串本町と那智勝浦町の町境付近に進入路を整備中。昨年秋には射場や組立棟と対の施設・総合司令棟も外観を見せ始め、住民の関心をにわかに高めるきっかけになっている。

 公表されている小型ロケットの大きさは全長約18㍍、直径約1・5㍍、重量約23㌧。打ち上げ後は3段式の固体燃料エンジンと4段目となる軌道修正用液体エンジンで徐々に加速し、先端のフェアリング(膨らんだ部分)に積載した人工衛星を高度500㌔の軌道へ放つ。

 初年度に1基、20年代半ばには年間20基の打ち上げが目標。目標に達すると3週間に1回は打ち上げがある計算になる。天候に左右されるため打ち上げ日時が定まるのは直前となり、事前には「打ち上げ期間」として示される、と同町は町民対象のワークショップ(WS)で伝えている。

 当初は21年中(12月)とされた1号機の打ち上げ。昨年10月実施のイベント「宇宙シンポジウムin串本」に登壇した同社・遠藤守最高顧問は「21年度の打ち上げを目指して頑張る」と表現して地元の協力を求めた。

 見学場所について那智勝浦町は早い段階から旧浦神小を公表し、串本町は田原海水浴場に仮設し同時に庁内想定する候補地で1号機を定点撮影し見学場の位置を決める考えで、1号機のみ樫野崎を町内の児童生徒ら専用の見学場所とすることも模索している。ロケットはおおむね南東~南(紀伊大島直上は避ける)へ飛ぶため、串本町はWSで「視界の妨げがなければほぼ町域全体で見られる」「ロケットが見られるのは打ち上げ直後のわずかな間だけ。以降は噴射炎と噴煙、音を頼りに目で追う状況になる」としている。

 公表されている1号機の見学場の許容量は2カ所計で5000人規模。他方で最初の打ち上げは2万人が見学で訪れる想定。民間ロケット発射場周辺地域活性化協議会が喫緊の課題として対策を模索しているが、今年もさらに検討を要する状況となっている。

 総合司令棟を有する串本町の田嶋勝正町長は「交通渋滞は今も懸念するところ。1発目は期待よりも不安の方が大きいぐらいで、田原の皆さんに賛成いただいたことが間違いとならないよう、受け入れの容量を慎重に分析しつつ支障のない方法を考えていきたい」とコメント。今年の力点について「町民の理解を深め、経済につなげる。今後を考えればいくらでもアイデアが出てくるので、その議論にみんなで挑戦して町が盛り上がる状況をこれから目指したい」と語った。

(2021年1月1日付紙面より)

射点における打ち上げイメージ図。2021年度中の実現が目指されている(スペースワン株式会社提供)
イベント「宇宙シンポジウムin串本〈第2回〉」。先端情報発信の場として回を重ねている
昨年11月末現在のスペースポート紀伊の進入路。総合司令棟が外観を見せ始めている

2021年01月01日
35 地域の踊りを後世に
 コロナ禍での祭りやイベント  (紀宝町 )

 2020年は、新型コロナウイルスの影響で地域の祭りや各神社の例大祭が中止や規模縮小になった。多くの観光客でにぎわう大きな祭りや、地域で長年受け継がれている盆踊りなども〝例年通り〟とはいかなかった。3密を避けるための苦渋の決断だったことがうかがえる。

 中止を決めた各地区の関係者は「今年(2021年)こそは」と話す。地域の行事や祭りは住民が積み上げてきた歴史と誇りが詰まっている。過去から引き継ぎ、未来へと継承していくことで、担い手が育ち「伝統」と呼ばれるようになる。

 伝統がいくつもある中で、昨年中止や延期になった紀宝町各地区の「踊り」にスポットを当てた。改めてその伝統の価値を再認識し、今年の祭りが一段と盛り上がることを願っている。

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■鵜殿ばやし



 鵜殿(うどの)ばやしは1992(平成4)年に誕生し、96(平成8)年に保存会(市川英美代表)が発足。うどのまつりや紀宝みなとフェスティバル、芸能発表会などで披露し、町村合併以前の旧鵜殿村運動会でも住民総出で踊ったという。

 保存会のメンバーは大人25人、子ども8人の計33人。毎月2回、ふるさと歴史館で練習している。例年、鵜殿小学校の運動会でも児童が踊り、矢渕中学校の地域学習でも教えているという。

 市川代表は「鵜殿ばやしの歌詞は『力を合わせて八丁櫓(はっちょうろ)をこげば』や『日本一の小さな村に』といった昔の鵜殿村の様子を盛り込んでいる。『沖を眺める』『網をたぐり寄せる』などの漁師のしぐさがある男踊りなので、元気よく踊っている。手を上げる角度、指先の力の入れ方など、難しい踊りなので大人でも覚えるのが大変。難しいだけに〝大好き〟と言ってくれる人も多い」と話す。

 昨年は新型コロナの影響で発表の場がなく、「今では鵜殿地区だけでなく、町内全体に広く会員を募集している。若い人に継承してほしいし、今年は発表の場が欲しい」と語る。

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■神内音頭



 11月23日の神内(こうのうち)神社例祭の日に合わせて開催する「神内まつり」。毎年、実行委員会を結成し、山車や神輿(みこし)が地区内を練り歩き、区民が神内音頭、紀宝音頭などを踊る。

 神内音頭は、神内まつり、夏の納涼大会のほか、神内小学校の運動会でも児童と保護者、地域住民が一緒になって踊る。子どもたちも慣れ親しんだ踊りだ。

 神内まつりは途絶えた時期があったが、四十数年前、住民同士の交流を深めようと結成した「神内を考える会」が復活させた。

 初年は獅子舞と神輿から始まり、2年目から山車も登場した。昭和40年代に区民から歌詞を公募して神内音頭が生まれた。以降、毎年途切れることなく続いてきたが、昨年は新型コロナウイルスの影響で中止となった。

 神内音頭は、タオルを首に掛けて踊るのが特徴。歌詞には「神内の名所の子安の宮は可愛(かわい)い産子(うぶこ)の守り神」「皆んなおいでよ神内の里へ春は桜で夏ホタル」「みさご岩から滝見下ろして人情深さは親ゆずり」など、神内の名所などを盛り込んだ。

 神内出身の福田丈太朗さんが作曲、振り付けは日本舞踊・哲泉流家元の外畑宗泉(弘江)さんが手掛けた。編曲は須川寿夫さんが担当した。

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■ほうき踊り



 「厄落とし」の観音として有名な井田観音。毎年、8月9日夜に境内で開かれている「納涼盆踊り」で、江戸時代から続く「ほうき踊り」が奉納されている。

 井田観音の観世音像は鎌倉時代のものといわれている。当時から多数の信者を有し、毎年3月の初午祭(はつうまさい)の日は遠近から参詣人が集まった。巡礼者が参道の両側に並び、大道芸人、露店も出てにぎわったという。

 盆踊りは江戸時代から続く伝統行事。毎年、やぐらを組みほうき踊りが行われる。稲の害虫を退治し、払う動きを模したもので地元の住民らが長さ約1・2㍍の「しゅろぼうき」を持ち、やぐらを囲んで太鼓の音と歌い手の音頭に合わせて踊る。

 一時途絶えていたが、地域の若者たちが伝統を継承しようと40~50年前に復活した。踊りを後世に伝えようと結成した実行委員会の前地敏久実行委員長は「3年ほど前には井田小学校で踊りを教えた。地区の子どもは少なくなっているが、伝統の踊りを受け継いでほしい」と話している。

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■薬師踊り



 白河法皇が建立を勅願したとされる平尾井の平尾井薬師堂(石負山(いしおざん)仏願寺(ぶつがんじ))。毎年、1月8日に「冬の大祭」、8月16日に「夏の大祭」が営まれている。夏は「薬師の庭」と呼ばれるお堂横の広場で地区に伝わる盆踊りが奉納されている。

 白河法皇ゆかりの盆踊りとして知られ、御前で村人たちが踊りを披露したところ、法皇が喜び、後世に残すように言われたと伝えられている。

 日の丸の扇を用いることが特徴で、音頭取りの口説きと太鼓に合わせて「平尾井甚句」「薬師踊り」など13曲を踊る。十数年前までは23曲あったという。

 地元の老人クラブ「平和クラブ」が薬師堂や石段の参詣道を含む広い境内の清掃管理などに努めており、林杜谷(もりひろ)会長(74)は「盆踊りは900年以上の歴史がある。子どもの頃の60年ほど前は100人くらい参加していた。この伝統を若い人に引き継いでもらいたい」と話している。

(2021年1月1日付紙面より)

うどのまつりで踊る鵜殿ばやし
地区総出で踊る神内音頭
江戸時代から続く「ほうき踊り」
900年以上の歴史を誇る平尾井薬師堂の盆踊り
2021年01月01日
36 M地記者の超挑戦  新たな挑戦…そしてその先。  
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47 山青し 海青し 文化は輝く  花開く、国内最大の文化の祭典  (「紀の国わかやま文化祭2021」まであと300日 )
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49 北山村から全国各地へ じゃばら事業の発展と観光施策 
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50 Working with Kumano forest  100年後の森のために。ぼくらが今、できること。  (NPO法人「熊野の森をつくる会」の取り組み )
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51 次世代担う語り部たち  「語り部ジュニア」活動15周年  (本宮町 )