追い込み漁前に部内連携強化 (太地町 )
9月から始まる小型鯨類追い込み漁を前に第五管区海上保安本部は28日、太地漁港周辺で反捕鯨団体による違法行為を想定した事案対処訓練を実施した。田辺海上保安部、串本海上保安署、関西空港海上保安航空基地が加わり、海上保安官、太地町漁業協同組合など計約40人が参加。官民一体となり連携を深めながら海上訓練に取り組んだ。
同町へは2010年以降、過激な環境保護団体などが多く訪れ、港の無許可撮影などの嫌がらせ行為を続けてきた。昨年は目立った違法行為は確認されていないという。
訓練は▽基本訓練(ゴムボートによる高機動訓練)▽想定訓練(カヤック乗艇者の転覆救助事案対応訓練)▽想定訓練(違法行為者の海上追跡捕捉事案対応訓練)―などの対処を行うもの。この日は巡視船きい、巡視艇むろづきのほか、ゴムボート3艇、警備救難艇1艇、カヤック1艇、太地町漁協の漁船1隻、ヘリコプター1機を用いた。
想定訓練では鯨類を搬送中の漁船に対し、抗議を行う反捕鯨活動家たちが駆け付けた海保のゴムボードに発煙筒を投げつけて妨害し逃走。ゴムボートとヘリコプターが追跡し逮捕した。
田辺海上保安部の上野春一郎部長は「訓練は追い込み漁に対し海上における違法行為や人命財産の保護を目的としたもの。今回は部内の連携強化と個人のスキルアップに重点を置いた」。新型コロナウイルスの影響で反捕鯨団体の入国については不明としながらも「会員制交流サイト(SNS)を通じての活動を呼び掛けたりと予断を許さない状況であるため、和歌山県警と連携し取り組んでいきたい」とあいさつ。
海上保安庁警備救難部警備課の小野雄介さんは「太地町の追い込み網漁の安全を守りきるという強い意志を持って取り組んでいることが感じられた。粘り強い警備をやり遂げていただきたい」と訓示した。
来月1日(火)から追い込み漁を控える太地いさな組合の田中清仁組合長は、今回の訓練や漁に向けて「ご協力いただける皆さまのおかげで安心安全の操業ができる。鯨類を追い込んだ際も海保の皆さまが警備してくれるので心強い。初日からバンドウイルカやゴンドウクジラを狙っていきたい」と語った。
(2020年8月30日付紙面より)
患者等搬送事業者認定証を公布 (新宮市消防署 )
新宮市消防署で28日、患者等搬送事業者認定証公布式があった。越水薫消防長が、新宮市の介護事業所・株式会社アイドル「サポート新宮」の榎本義清代表に同署1号となる認定証を手渡した。同署は和歌山市消防局、日高広域消防本部に次いで県内3番目の認定消防本部となった。
救急車の出動が年々増える中、緊急性の低い患者の搬送に利用できる「患者等搬送事業」(民間救急)の需要が高まっている。同事業は、民間事業所が国土交通省の許可などを受け、搬送用自動車を用いて患者の搬送を提供する有料サービス。主にタクシー会社や福祉事業所が医療機関と連携し、ベッドの設備などを有した車両で利用者の搬送を行う。
消防救急が、傷病者の観察や応急処置を行い速やかに適切な医療機関に搬送することを目的とする一方、民間救急は緊急事態に対応するものではないが、救急車を呼ぶほどでもなく、寝たままや車椅子で病院の診察を受けたい時の交通手段として利用される。
搬送中に患者の容態が急変し緊急を要する事態となった場合には救急車を要請し、心肺蘇生や自動体外式除細動器(AED)を用いて電気ショックや止血などの必要最低限の応急手当てを施し救急隊に引き継ぐ。
同社では榎本代表を含むスタッフ4人が7月と8月の計3回、1日8時間の研修を受講した。2年ごとに乗務員定期講習会を受ける必要がある。
認定証の公布に当たり、越水消防長は「患者の生命および身体の安全を確保し、搬送事業の質的向上を図るという目的が達成されるものと感じている」とあいさつ。「われわれと同じく患者搬送業務をする上で、生命・身体の安全の確保の大切さをこれからも共有していただきたい」と協力を求めた。
同社が所持する民間救急車は9人乗り。通常2人のスタッフが乗務する。酸素・吸引器も搭載。点滴のまま移動することが可能。運転席と後部席の間に透明の仕切りを設置するなど、新型コロナ感染防止対策も講じている。
榎本代表は「(研修を受け)安心・安全・安楽な搬送をしっかりと教えていただいた。教えに従ってやっていきたい」と話していた。
料金は初乗運賃(1時間または走行15㌔㍍まで)6000円など。問い合わせは民間救急サービスサポート新宮(電話0735・28・5050)まで。
(2020年8月30日付紙面より)
紀伊半島大水害記念公園で清掃 (那智勝浦町 )
紀伊半島大水害(2011年)から9年を迎える9月4日(金)に向け29日、那智勝浦町井関の紀伊半島大水害記念公園で那智谷大水害遺族会代表の岩渕三千生さんと地元建設業有志ら約30人が慰霊碑の清掃や周辺の草刈りに取り組んだ。清掃後、慰霊碑に手を合わせた岩渕さんは「忘れてはいけない。忘れさせてはいけない。何年たとうがその気持ちは変わらない」と思いを語った。
清掃は、水害発生当日の追悼供養や慰霊祭を前に毎年実施する恒例行事。今年は新型コロナウイルスの影響で町の慰霊祭の式典は中止となったが、有志らによる声掛けでこの日の清掃活動に至った。
参加したのは、カミジ技建㈱、井筒建設㈱、㈱庵野組、大和建設㈱、木原造林㈱、陽光建設、岡山組、㈲松岡組、㈲中川建設、㈲崎建設、田中建設㈱、㈱下山組、㈲下山建設工業―の13社。約40分にわたる清掃活動に汗を流した。
岩渕さんは「きれいになってほっとしている。今年も快く清掃に参加してくれてありがたい」と参加者に感謝。
「毎年のように、あの災害がなかったら、と思う。忘れないために後世に伝えていくべきだと思う」。現在もなお、復興活動が続く中「早く昔の那智谷に戻ってほしい」と話していた。
同公園では4日未明、死者・行方不明者と同じ数の29個のLEDをともす追悼供養を行う予定。
(2020年8月30日付紙面より)