那智勝浦町の漁業関係者らで構成する町水産振興会(片谷匡会長=紀州勝浦漁業協同組合代表理事組合長)は15日、勝浦地方卸売市場で水産振興会大会を開いた。水揚げの多い漁船や優秀魚商らの表彰があった他、和歌山県水産試験場の藤田朋季研究員が「近年のカツオ漁業の実態について」をテーマに基調講演。当地方の漁業に影響を及ぼしてきた黒潮大蛇行の動向などについて、出席者らが耳を傾けた。
黒潮大蛇行は、暖流である黒潮が、紀伊半島沖から南方へ大きく蛇行する現象。蛇行後、紀伊半島東岸では、イセエビやヒジキなどの漁獲が大きく減少していた。
2017年8月から過去最長の7年9カ月にわたって続いた大蛇行について、気象庁は今年5月、「終息の兆しがある」と発表。現在はおおむね2カ月間、黒潮が紀伊半島に沿って流れている。
講演では、藤田研究員が自身の研究分野であるカツオを取り上げ、黒潮の流路変化による漁場環境の変動に言及した。カツオは、黒潮からの暖水が流入することで紀伊半島沿岸に来遊。今年の春漁期(1~5月)は、四国・紀州の海域で約1000㌧と、過去10年平均の1・7倍の漁獲を記録した。一方、鹿児島以南や伊豆・小笠原では激減。東北の宮城・気仙沼でも、カツオの歴史的不漁とビンチョウマグロの豊漁などが起きていると語った。
県水産試験場は今年から、紀伊半島沖に6基設置されている浮魚礁(回遊魚が漂流物に集まる習性を利用して集魚を図る人工漁礁)の一部に魚群探知機を導入する予定。2年後をめどに、リアルタイムの漁場情報を漁業者に提供するシステムの構築を進める方針だという。
片谷会長は沿岸漁業について「イセエビや貝類の漁獲は衰退の一途をたどっており、イセエビは2023年の9・8㌧から昨年は5・9㌧と半減に近い結果。行政や研究機関とも連携を強化し、漁業関係者一丸となって、藻場造成などに取り組む」。また、昨年の勝浦市場の水揚げについて「9822㌧、約71億5000万円」と報告し「外来船の誘致に積極的に活動し、水揚げ確保を目指す必要がある。老朽化が目立つ市場施設の整備も喫緊の課題であり、早急な改善が必要」と述べていた。
(2025年7月18日付紙面より)
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