那智大社、青岸渡寺で訓練 (那智勝浦町 )
「第67回文化財防火デー」の26日、那智勝浦町の熊野那智大社(男成洋三宮司)と那智山青岸渡寺(髙木亮享住職)で消防訓練が行われた。職員や那智勝浦町消防本部(湯川辰也消防長)が参加し、防火の重要性を再認識するとともに国の宝を守る意識を高めた。
文化財防火デーの1月26日は1949(昭和24)年に奈良県の法隆寺金堂壁画が焼損した日。55(昭和30)年から、この日を中心に消防と地域が連携し、全国的に防火活動が展開されている。
熊野那智大社では宝物殿裏の山林からの出火を想定。自衛消防隊が火災の報知後、宝物などを運び出し、消火ホースで放水した。続いて、消防職員が神職らに消火器の取り扱い方法を指導し、実際に使用した。
男成宮司は「ご本殿は重要な建造物、火を出してはいけない。訓練を通じて防火意識を高め、火気の管理を徹底し、万が一の際に行動が取れるように心掛けてほしい」と話した。
那智山青岸渡寺では訓練前に職員が集合し、髙木亮英副住職が同寺は西国三十三所の第一番札所であり、観音信仰の布教にとっても重要な建造物であると説明。訓練について「重要なお寺を後世に伝え残していくことが大きな使命。火を出さないことを再認識して訓練に取り組んでほしい」とあいさつした。
同寺では本堂床下から出火した想定で訓練を実施。髙木副住職の指示の下、初期消火や避難誘導、宝物運搬、消火器による消火訓練などに取り組んだ。
湯川消防長は両社寺に対して課題の検証や訓練の積み重ねを継続してほしいとし、「火災の報知や的確な放水が行われており不備はなかった。世界遺産を守るために消防も一致協力していきたい」と講評した。
(2021年1月27日付紙面より)
田原小と絵本作家協力し (串本町 )
串本町立田原小学校(野端則久校長、児童14人)が25日、同町コミュニティバスにラッピングする絵の着色に取り組んだ。絵本作家・やのともこさんとの共同作業の一環で、やのさんは14人の絵を組み合わせて必要な原画を仕上げるという。
同町は同バス4路線のうち、潮岬線と佐部・上田原線の車両について新旧入れ替えを目指している。新車は初導入となる29人乗りのノンステップ仕様。当初は潮岬線で先行導入し高齢化が進む町域になじむかを確かめるとしていたが、後に町民から受けた寄付を生かすため関係する佐部・上田原線も先行導入の対象に加えた。
同バスは路線にちなんだラッピングが特色で、佐部・上田原線の新車にはロケット関係の原画採用を想定。写真がまだ存在しないためイラストを採用する方向で検討し、町民寄付の思いに子どもの夢を上乗せする方向性を持った。他方でプロの手も借りたいという思いから、くしもと町立病院にホスピタルアートを飾る縁をたどりやのさんに相談。最地元の田原小児童との共同制作を前提にして具体化するに至った。
必要な原画は新車の側面と後面に用いる3枚。この日はやのさんが来校し、ロケットと灯台や橋杭岩、キャラクターなどを描いた下絵と塗り方の雰囲気を伝えるため着色済みの見本を児童に配り、着色を求めた。画材は色鉛筆とソフトパステルで、後者は温かいタッチにするため指に付けて塗るよう指示し後は自由とした。
今後は14人全員の絵を部分的に切り出し、やのさんが良い感じに組み合わさるよう手を加えて原画を仕上げるという。
児童の荒木野乃子さん(6年)は「全体的にふんわりとしたイメージになるよう、細かなところもできるだけ色鉛筆を使わないようにした。これから(中学校への通学で)コミュニティバスに乗る機会が増えるので、その時が今から楽しみです」とコメント。やのさんは「指で色を塗ることで思い通りのものができるという新感覚を感じてもらえたらうれしい。このロケットの絵がバスのラッピングになるということで、今日は私も含めみんなで貴重な経験ができたと思う」とこの機会を喜んだ。
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役場企画課によると、新車は2月末に納車予定。現行のマイクロバスと車両感覚が異なるため、運転手の馴致期間を若干取り4月中にの入れ替えを目指している。潮岬線は従来通り路線にちなんだ写真をラッピングするという。
(2021年1月27日付紙面より)
橘、丹羽教諭が表彰受ける (新宮高校 )
県立新宮高校(前田成穂校長)の橘恭子・国語科教諭(46)がこのほど、和歌山県教育委員会の「きのくに教育の匠(たくみ)」を受賞した。
県の教育振興や発展に功績があった個人、団体をたたえる「和歌山県教育表彰式」で表彰された。橘教諭は1996(平成8)年に教員生活をスタートさせて以来、25年にわたり同校に勤務。18(平成30)年度には、優れた教育実践が評価され「きのくに教育賞」を受賞した。
その後も継続的な実践で成果を上げつつ、他の教員の指導力向上に寄与したとして「きのくに教育の匠」に選ばれた。令和2年度文部科学大臣優秀教職員の表彰も受けた。
橘教諭は「恐縮しているが、大変ありがたい。生徒たち自身が物事を感じ、活動する中で意見や考えを交換して学びを深めるサポートになればとの思いを意識している。賞を頂いたことを励みに今後も授業はもちろん、さまざまな学びの場で指導に生かしていきたい」と述べた。
また、同校保健体育科の丹羽泰一郎教諭(40)が、県学校体育研究協議会から「和歌山県学校体育授業優秀教員」の表彰を受けた。
この表彰は県を代表する研究実践を行った教員が対象で、丹羽さんは「主体的に取り組み、生涯にわたって運動に親しめる健康で安全な体育授業」をテーマに授業を実践し、研究発表に取り組んできたことが評価された。
丹羽教諭は「受賞することができて大変うれしいとともに、自分自身の勉強にもつながったと思っています。時代に合った教育を目指して多くの先生方と情報共有しながら、さらに向上させていければ」と話していた。
(2021年1月27日付紙面より)
図書館・子育て支援セ複合施設 (紀宝町 )
紀宝町立図書館の開館に向け、同町神内の旧保健センターで改修工事が進んでいる。今春の開設を前に外観が完成し、看板も設置された。
3月下旬には新図書館と子育て支援センター複合施設の竣工(しゅんこう)式を実施する予定。新型コロナウイルスの状況を確認しつつ、プレオープニングイベントを計画している。イベントはワークショップで紋切り作品を作ってもらい、地区住民や施設利用者に飾り付けを呼び掛ける。
町では、まちづくり構想の基本理念「海・山・川の恵みに抱かれ、ともに輝き創造するまち」の拠点として、より多くの人に親しみを持ってもらえるよう、新たな「図書館・子育て支援センター複合施設」の愛称を募集したところ、町内から62点の応募があった。
今後、教育委員や神内地区区長、子育て支援センター・子育てサークル代表、鵜殿図書館・絵本よみきかせボランティアなどで組織する「愛称選定委員会」で審査し、最終候補案の中から町長が愛称を決定する。
昨年12月に閉館した町立鵜殿図書館では、蔵書整理を行っており、役目を終えた本や雑誌は2月から移動図書館でも配布する。3月中旬から新図書館開館準備として利用者カードの修正作業に取り掛かる。
(2021年1月27日付紙面より)
那智勝浦ゴルフ倶楽部
ヒカンザクラが危機に (那智勝浦町 )
早咲きで知られるJR那智駅前のヒカンザクラ(緋寒桜)が枯れ始めている。この地方で一番早く、1月初旬から咲き始め、併設する道の駅を訪れる人を和ませてきたこのヒカンザクラが危機的な状態になっている。
那智駅周辺にはホームなどに数本のヒカンザクラがあるが、枯れ始めているのは駅前広場中心にある、シンボルとしてすっかり定着しているサクラ。例年ならメジロやミツバチが訪れて大変にぎやかになり、カメラやスマートフォンで撮影するカメラマンや観光客の姿が多く見られる。
数年前から勢いがなくなり、枯れた部分を剪定(せんてい)などしてきたが、樹勢は弱るばかり。勝浦側(西側)の幹は現在花が咲いているが、同所農産物直売所側(東側)の幹はほとんど枯れた状態になっている。
管理する那智勝浦町農林水産課では、東牟婁振興局林務課に相談し現在対策を整えている。東側の幹に関しては、落下などの危険性があるため切除することも検討しており、西側の幹は、2月に寒肥をするための準備を進めているという。
また、県の林業試験所の助言で、生きている幹から出た枝を数本採取して山桜を台木に接ぎ木をして育てており、枯れてしまったときのために備えている。
町担当者は「地域のシンボルである大切なサクラなので、なんとか復活させられるように努力したい」と話している。
(2021年1月22日付紙面より)
工業系高校6校をつなぎ (和歌山県 )
和歌山県内6校の工業系高校をオンラインでつないで20日、第37回工業教育研究発表大会が開かれた。新宮市の県立新翔高校(東啓史校長、生徒326人)でも建設技術系列の2年生6人が参加し、映像を通じて県内の工業高校生による研究成果発表に耳を傾けた。
和歌山県高等学校教育研究会工業部会(西村文宏部会長)とわかやま産業を支える人づくりネットワーク会議による恒例の大会。和歌山工業高校を発表会場とし、紀北工業高校、箕島高校、紀央館高校、田辺工業高校、新翔高校、県内企業をつないで約1000人が参加した。オンラインでの開催は今回が初めて。
西村部会長は「新型コロナウイルスによる臨時休校や就活日程の変更など厳しい環境の中で、工業を生かして研究を行い、一定の成果を出してくれて非常にうれしい。そこまで導いてくださった教職員や関係機関の方々に感謝いたします」とあいさつ。
作文部門では、4人が3年間の高校生活について発表。実習やコンテスト出場を通じた技術の習得、危険物取扱者や機械加工技能士といった国家資格の取得、部活動の経験を通じた自らの成長を語った。
Webプレゼン大会では「水準測量を用いた校舎各階の標高測定と津波防災への活用について」「紀の国わかやま総文、および文化祭2021のカウントダウンボードの製作」「ミストシャワーの製作」など社会貢献を見据えた個性豊かな発表がなされ、審査委員による質疑も行われていた。
(2021年1月22日付紙面より)
ころころ教室第2期始まる (串本町 )
串本町地域包括支援センター主催の介護予防教室「ころころ教室」の第2期が20日、町立体育館を拠点にして始まった。今期は寒さやコロナ禍が増す中での事前募集となったが、9人が2期生として受講登録。期間中は継続参加を希望する1期生と共に健康づくりに欠かせない知識を学び、家庭における実践の定着を目指す。
国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用した「在宅高齢者運動指導支援員雇用促進事業」の一環で昨年9月から始まった同教室。外出自粛などで過ごす機会が増えている家庭内での健康づくりを促して介護予防を図ることを目的とし、そのために欠かせない運動、栄養、口腔(こうくう)の各知識を一連のものとして伝える内容で帯開講している。
1期当たりの開講数は9回。昨年9~12月に第1期を実施し、14人が受講登録をして取り組んだ。第2期もコロナ禍の情勢を鑑みて定員を先着15人に抑え、同日から3月31日(水)までの間で2月の3日(水)と24日(水)を除いた水曜午後定例で全9回帯開講することを広報くしもとで告知。1期生による誘いの協力も得ながら、2期生を募集した。
第2期は、継続受講を希望する1期生が2期生のサポート役を兼ねて自由参加。初回は2期生9人と1期生5人が出席し、同センターを代表して保健師の中まどかさんがこの教室の趣旨や目指すところ、理学療法士や保健師、栄養士など専門職が運営を支えていることなどを伝えて歓迎した。
以降は同支援員の理学療法士・原井祐弥さんが推奨する準備体操や転倒の不安解消を意識しながらの運動指導をし、体力テストや体成分分析装置「InBody」による測定を実施した。
この教室は受講前に感染症予防対策として手指消毒と検温をし、併せて血圧の確認を実施。前述した測定は期間終盤にも再度行い、それら結果の変化を見て受講の成果を実感し家庭での健康づくりの意欲を高める材料とする仕組みも取り入れている。
(2021年1月22日付紙面より)
木の川認定こども園 (新宮市 )
新宮市木ノ川の幼保連携型認定こども園「木の川認定こども園」(丸本知加子園長)で20日、新宮市消防本部(越水薫消防長)と合同で、火災を想定した自衛消防訓練を実施した。0~5歳までの園児48人は職員の誘導に従い、駆け足で施設上にある白龍山宝珠寺(西昭嘉住職)へ避難した。
同園によると、消防と共に園児も参加しての取り組みは初だという。訓練は調理員の休憩室から出火した想定で行われた。避難を促す放送直後には職員が連携して園児を屋外へ安全に避難させた。
同寺境内では消防隊員が職員に対して消火器の種類や使用方法を説明。水消火器による実践訓練では「先生頑張って」と職員を応援する園児の姿も見られた。
その後、園児は同園駐車場で防火服の紹介を受け装備を約40秒で整えるもようを見学。子ども用の防火服に着替えたり、消防車両に乗車するなどさまざまな体験を通し、火災予防を学んだ。
市消防本部の中西淳消防係長は「熱心に取り組んでいただき感謝しています。子どもの頃から火災予防に触れることは重要。職員の皆さまには火災予防の大切さを広めてもらえたら。園児の皆さんには将来、消防士になりたいという夢を持っていただけたらうれしい」と話した。
丸本園長は「指導いただきました内容を職員で話し合い、毎月の訓練に生かしていきたいです」と語った。
訓練後、園児は隊員に対して元気いっぱい「ありがとうございました」と感謝を伝えた。
(2021年1月22日付紙面より)
飛瀧神社で牛王神璽祭 (熊野那智大社 )
那智勝浦町那智山の熊野那智大社(男成洋三宮司)の別宮飛瀧(ひろう)神社で8日、牛王神璽(ごおうしんじ)祭が営まれた。「牛王杖(ごおうづえ)」と呼ばれるヤナギの枝でカシの板を打ち鳴らし魔をはらい、霊験を高めて「牛王神符」を仕上げた。
牛王神符は熊野三山に伝わる特有の神札で魔よけ、災難よけのお守り。熊野の神の使いとされる八咫烏(やたがらす)の絵文字が描かれており、同大社では72羽のカラスで「那智瀧宝印」と記されている。
元日早朝に那智の滝からくみ上げた若水で墨を溶き、翌2日からの初刷りから毎日、本殿で祈とうが続けられてきた。満願を迎えたこの日は滝が凍るという神秘的な光景の中で、神事が執り行われた。
男成宮司らが無病息災などを祈り、仕上がった100枚の神札をヤナギの枝に巻いて参列者に授与した。
男成宮司は「今日は滝も凍り、より霊力を感じる中で清らかな心を持って神事を営むことができた。先日、緊急事態宣言が出されるなど新型コロナウイルスの感染が広がっている。一日も早いコロナの退散をお祈りしている」と語った。
(2021年1月9日付紙面より)
2年ぶりの幻想的な景観 (那智勝浦町 )
那智勝浦町の世界遺産「那智の滝」で8日朝、2年ぶりに滝つぼが凍った。滝の水しぶきが氷となって岩肌に張り付き、滝が白い雪化粧をしたような幻想的な景観を生み出した。
熊野那智大社(男成洋三宮司)によると、滝元の別宮・飛瀧(ひろう)神社の社務所にある温度計が午前7時の時点で氷点下2度を記録したという。
8時ごろには、朝日を浴びた岩肌の氷がバリバリと大きな音を立てて滝つぼに落下する光景が何度も見られた。
小賀真樹禰宜(ねぎ)は「急激な冷え込みと前日に強く吹いた風の影響でしぶきが岩肌に付き凍ったと思う。今日は正月から行っているお祭りが満願を迎える日。この日に凍ることがなかったため、大変ありがたいと思う」と話した。
凍った滝の様子を撮影していた寺嶋孝さん(63)と敦子さん(49)夫妻。敦子さんは「初めて見ることができた。すごくきれい」と笑顔。孝さんは「新型コロナウイルスの終息と、われわれの健康や商売繁盛をお願いしました」と語った。
(2021年1月9日付紙面より)
第53回三重県アンサンブルコンテスト中学校の部南地区大会が昨年12月26日に県文化会館であり、紀宝町立矢渕中学校吹奏楽部(岡本怜奈部長)の打楽器三重奏と混成八重奏の2チームが金賞を獲得。今月17日(日)の県アンサンブルコンテストへの出場を決めた。
南地区大会は県内18市町の中学校から70チームが参加。矢渕中は2年生7人、1年生4人の11人全部員が2チームでエントリーした。
打楽器三重奏は3人で「雅~3人のマリンバ奏者のための」を演奏した。混成八重奏のメンバーはフルート、クラリネット、サックス、トランペット、ホルン、チューバで「『舞曲集』よりアルマンド、パヴァーヌ・パッサメッツォ、バスダンス」を奏でた。
部員たちは県アンサンブルコンテストに向け、5日から練習を再開。岡本部長は「最初はみんなばらばらで地区大会に出られるか不安だったが、地区代表の目標を掲げて練習を続けた結果、目標が達成できた」と振り返り、「県では悔いのないよう演奏したい」と語った。
(2021年1月9日付紙面より)
田辺市本宮町の熊野本宮大社(九鬼家隆宮司)で7日、和歌山県指定民俗文化財の「八咫烏(やたがらす)神事」が営まれた。厄よけの「白玉宝印(しらたまほういん)」を入手しようと、事前に申し込みをしていた参列者が訪れた。
正月三が日の間、神門前に飾られた門松で「熊野牛王(ごおう)宝印」を調製し、たいまつの火と水ではらい清め、祭神の魂を吹き込む宝印押し初めの神事。今年は新型コロナウイルス感染防止のため、7日、16日(土)、23日(土)、30日(土)、31日(日)の5回に分け、1回の参列者を上限50人に限定し行われる。
この日は拝殿の照明を落とした暗闇の中、神職が「えーい」の掛け声とともに拝殿の柱へと宝印を押して奉納した。神事後、参拝者は、神職が白紙に押した宝印を順番に授かっていった。
九鬼宮司は「コロナ禍でいろんなことを模索している日々だと思いますが、必ず事態が収束すると信じています。この状況に惑わされず、前を向いて未来や夢、希望を持っていれば道は開ける。今年の干支(えと)『丑(うし)』のように粘り強く自分の歩幅で過ごしていただきたい」とあいさつした。
宝印を頂くのは10年ぶりという鈴木純二さん(51)は「コロナウイルスの影響もあり、訪れようか迷いましたが、対策を万全にした上で足を運びました。一日も早い収束を願った。自宅で大切に取っておきたいと思います」と話していた。
(2021年1月9日付紙面より)
【第28回】コロナ禍の今こそ食卓が大事
コロナ禍が続いています。自宅で食事をする機会が多くて毎日の食事作りもうんざりというお母さんも多いのではないでしょうか? でも、今こそ家の食事が、とっても重要なんです。今、子どもたちは学校で、感染予防のため、給食中の会話を禁じられています。この給食の時間は子どもたちの食意識に影響しています。
子どもの頃の給食の思い出が将来の食意識にどんな影響を与えているかを研究した論文があります。「給食が楽しい時間であること、楽しい会話ができる場であることが、大人になってからの食に関する意識や食生活行動に好ましい影響を及ぼしていることが考えられ、給食の時間が楽しい場であることが重要だと示唆された」(大妻女子大学家政系研究紀要「子ども時代の孤食が大人になっての食への意識にどのように影響するのか」、2017年)。ここでいう大人になってからの食意識とは「温かい食事は家族にとって大事か」「家族そろった食事を心掛けたい」「食事はなるべく手作りしたい」「栄養バランスを考えた食事をしたい」などです。
子どもたちにとって、友達と楽しく食事をする給食はメンタルにも影響するという論文もあります。「『給食の時間は楽しいですか』という問いに対して、『とても楽しい』と回答した群は、『それ以外の回答』の群と比較し、男女ともにQOL総得点が高く男子の家族得点をのぞいて有意な差が認められた」(栄養学雑誌「小学5年生児童における給食の食べ残しおよび給食の楽しさとQOLの関連性」、2015年)。ここでいうQOLとは、身体的な健康・精神的な健康・自尊感情・家族友達との関係・学校生活の印象などを得点化したものです。つまり給食が楽しいという気持ちはたくさんの感情とつながり、子どもたちのメンタルも健やかにしているのです。
その給食の時間で会話を禁止されるということは、楽しい時間を制限されるということなんです! 会話なく、黙々と食事を取るのは大人だって楽しくないですよね? 子どものメンタルを健やかに保つためには、楽しい食事が最も大切なんです。そして、給食が楽しい時間ではなくなった今それをカバーできるのは家庭での食卓だけです。
だから今こそ、家族で取る食事を会話であふれた楽しい食事にしてあげてください。クタクタなときは作らなくてもオッケー! 買ってきたものでも、外食でも、デリバリーでも、会話をしながら楽しく食べればオッケーです! 「おいしいね」と言いながら、今日あったことを話してください。きっと子どもたちは、いつもと違う環境への不安やコロナ禍の不穏な空気を払拭できると思います。
大人にとっても、子どもにとっても今は誰も経験したことのない未知の環境です。でも、そんなときだからこそ子どもたちに食卓で安心感を与えて心を健やかにしてあげたいと私は思っています。
(2021年1月9日付紙面より)