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2020年08月27日
1 よみがえれ、ギャランGTO
 形見の愛車、修理進む  (紀伊半島大水害から9年 )

 三菱ギャランGTO―。1973(昭和48)年製の往年の名車の持ち主は中平幸喜さん(享年45)。幸喜さんは9年前の2011(平成23)年、紀伊半島大水害により帰らぬ人となった。主人(あるじ)を亡くした車も同水害により水没。9年近く泥にまみれた状態のまま保管されていたという。しかしこのほど、動かなくなった車をよみがえらせようと立ち上がった有志たちにより、現在車の修復作業が進められている。

 紀伊半島大水害の被害が大きかった那智勝浦町市野々地区。中平家では幸喜さんをはじめ妻の澄子さん、長女の彩音さん、次女の百音さん、次男の景都君が土石流に流された。当時、東京で就職していた長男の史都さんは家族5人を失った。

 幸喜さんは新宮市熊野川町で中古車販売店を経営。同町においても甚大な被害をもたらした水害は、看板代わりに置いていた幸喜さんの愛車「ギャランGTO」を店舗もろとも水没させた。形見の車の修復は遺族らの念願だったが、年式の古さや水没したことなどを理由に修理は断られ続けた。そして未曽有の大水害から8年以上の月日が経過した。

 「どうにもならん、と言うから、どうにかなるやろ、と思った」。幸喜さんの兄・敦さんと親交のある中村進太郎さんは車を修理するに至った経緯を語る。幸喜さんと面識はないものの、中村さんは敦さんに対する日頃の恩を返そうと一念発起。車を紀宝町の中古車販売店「car shop CREW」に持ち込んだ。

 同業によるつながりもあり、生前幸喜さんにお世話になったという同店の今井寛己代表は修理の依頼を快諾。修理には1年~1年半ほどかかるとしながらも「使える部品はそのまま使いたい。公道を走れる状態に持っていくのは最低目標」と熱を込める。

 「幸喜さんは明るくて気さくな人だった。厳しいところもあるが、困っていたら助けてくれる人だった」と今井さん。「敦さんの熱、中村さんの熱。みんなの『誰かのために』という熱意を感じている。そんな思いに応えたいと思った。幸喜さんの車が持ち込まれたのも縁だと感じている」。

 「泥も落とされ見違えるくらいにきれいになった。先が見えてきたように思う」。修理の進捗(しんちょく)状況を見に訪れた中村さんだ。車を前に、今井さんと先の大水害に対して思いを巡らせ、「慰めにしかならないかもしれない。でも、(敦さんに)直った車を弟と思って大事にしてもらえたらうれしい」と語った。

 水害以前の姿によみがえった父の形見である「ギャランGTO」が、史都さんの元に届く日もそう遠くはないだろう。

(2020年8月27日付紙面より)

今井寛己代表(左)と中村進太郎さん。中平幸喜さんの愛車の修理が進んでいる=24日、紀宝町鵜殿
2020年08月27日
2 飼育個体の卵ふ化始まる
 屋外のウミガメパークで  (串本海中公園 )

 串本町有田にある串本海中公園センター水族館で今年も、館内飼育するウミガメ類の卵のふ化シーズンが始まった。

 串本の海の生き物を展示する同館。その象徴となっているのがウミガメ類で、屋外にあるウミガメパークでアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ30匹を飼育展示しデッキ上からの観察や餌やり体験によるコミュニケーションで来館者に親しまれている。

 同パークには砂地の産卵場も備わっていて、飼育個体が年々の繁殖に利用。今年は6月15日分を初として今月24日までに14回の産卵を確認していて、その場所に旗を立てて来館者に伝えている。産卵回数は例年よりやや多め。うち6月21日分が8月20日に今年初となるふ化を迎え、稚ガメ25匹を水槽で保護している。

 ウミガメ類に詳しい吉田徹副館長によると、アカウミガメは産卵から60日ほどでふ化するそう。館内トピックス水槽で一部を展示している8月4日分が今年最終の産卵で、ここから推してふ化シーズンは9月いっぱいまで続くという。

 この展示は、自然界では砂に埋まっていて観察できない卵を間近に観察してもらうため実施。ふ化後の稚ガメは夜間の時間帯を感じて砂から出てくるがふ化自体は時間帯によらないので、居合わせた来館者にその瞬間を見届けてもらえればと期待しながら続けている。

 産卵場は自然条件でのふ化率を調べる環境になっていて、例年は300匹前後の稚ガメがふ化するという。うち数十匹を研究用や展示用に飼育し、残りは極力飼育環境に慣れないうちに海へ送り出している。稚ガメの大きさは甲長4・5㌢前後、体重20㌘前後。現在子ガメのタッチングを中止しているが、9月初旬から今年生まれた稚ガメの館内展示を始める方向で段取りを進めるという。

(2020年8月27日付紙面より)

産卵場所を伝える旗が並ぶウミガメパーク=24日、串本海中公園センター水族館
20日にふ化したアカウミガメの稚ガメ
2020年08月27日
3 ブルービーチ利用の事業など
 観光機構が町民に説明  (那智勝浦町 )

 那智勝浦観光機構(NACKT)は25日、那智勝浦町体育文化会館で町民説明会を開催した。同日午前の説明会では観光機構の取り組みや観光地域づくり法人(DMO)についての講演などが行われた。

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■日本の観光の方向性は



 大阪観光大学観光学部教授の小野田金司さんが「日本の観光政策の方向性とDMOについて」をテーマに講演。成功している日本版DMOに田辺市熊野ツーリズムビューローを挙げ、一市町村で年間5億円の売上を突破していることは稀と話した。

 日本と世界の旅行消費額(2019年調査)を比較し、国内旅行では1人当たり3万7355円だが、訪日外国人は15万8531円で4・2人分になるとし、インバウンドの経済効果の高さを示した。

 政府が30年に定める旅行消費の目標額が37兆円であるとし、自動車の輸出額を上回ることになると説明。「観光は外からのお金を獲得することが目的。地方にとっても外貨を獲得することが重要」と締めくくった。

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■機構の取り組みなど



 同機構の堀千寿子さんは旅行は時代の変化に伴い、物見遊山スタイルからモノ消費となり、コト消費、ヒト消費に変化してきたと説明。現在はそれぞれのカテゴリーにアプローチを検討・実行する観光マーケティング戦略が必要になったと話した。

 教育旅行向けコンテンツを作成する西村和薫さんは「昨年度と比較し、本年度は10倍近い学校が町に来る。再び町に訪れていただけるような魅力的なツアーを作っていきたい」と述べた。

 同機構は商品開発のための基礎調査として、「町観光資源体系的な洗い出し調査」「世界遺産・熊野古道『大辺路』を核にした魅力アップ調査」「駅周辺観光資源活用化調査」など、磨き上げの取り組みを挙げた。

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■音楽フェスやブルービーチ活用も



 村井弘和事務局長は、現在補助金申請中の事業を説明。同町の生マグロと関西ミュージシャンを融合させた地元密着型音楽フェス「まぐロック」の開催を今年12月に予定していると話した。

 関西都市圏在住の音楽好きの30代社会人をターゲットに1日700人の集客を想定。7日間開催し、日付ごとにコンセプトや出演者を変更する。3密回避のためブルービーチ那智を会場とし、GoToトラベルキャンペーンとの連携、生マグロの解体ショーなど観光資源を活用した演出を行うという。

 また、ブルービーチ那智の有効活用として、宿泊施設としてテント5棟や、子どもが遊べる遊具、カフェを併設する。ビーチをこれまでにない憩いと集いの場にする「BLUE BEACH NACHIプロジェクト」を挙げた。

 同ビーチは吉野熊野国立公園内であるため、和歌山県や環境省と話し合い、許認可を得ながら進めていると説明した。

 なお、9月3日(木)にオープニングセレモニーを開くという。

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■参加した町民は



 説明会に参加した男性は「地域や人にもスポットを当てるなど、観光協会とは違った視点で観光に取り組み、課題の解決をしてくれることを期待している」。

 女性は「町に昔からある貴重な資源財産を知って、PRすることも大切では」と話していた。

(2020年8月27日付紙面より)

「BLUE BEACH NACHI」の全体イメージ(那智勝浦観光機構提供)
カフェイメージ(那智勝浦観光機構提供)
2020年08月27日
4 熱中症やコロナに負けず
 MYNSが稲刈り作業  (新宮市熊野川町 )

 新宮市熊野川町で農業活動に取り組む「MYNS(マインズ)」は稲刈りを実施した。メンバーたちはしっかりと育った稲穂を刈り取り、収穫に汗を流した。

 MYNSは2011(平成23)年9月に発生した紀伊半島大水害の救済措置として国からの災害復興支援を受けて始動。南本安信さん、山口一男さん(故人)、西道弘さん、下阪殖保さんの頭文字を取って名付けられ活動している。田植えは4月末に実施。今年は今月16日から作業を開始し、同町能城(のき)地区にある7区画の田んぼ合計約120㌃の稲刈りに取り組んでいる。

 21日には地元農家や地域住民も応援に訪れた。メンバーらは成長した「こしひかり」の稲をコンバインで刈っていき、協力しながら脱穀作業に励んだ。

 下阪さんは「例年に比べて収穫量は少ないが、品質は良い。メンバー間だけでなく、手伝っていただいた方々に感謝しています。みんなで力を合わせてコロナに負けず、熱中症に気を付けながら仲間である山口さんの分まで猛暑を乗り切って頑張っていきたい」と話していた。

(2020年8月27日付紙面より)

稲穂をコンバインで刈り取るメンバー=21日、新宮市熊野川町
2020年08月27日
5 LINEで情報配信  防災行政無線放送の内容を  (御浜町 )
2020年08月27日
6 稲刈りに備えて  丸山千枚田で草刈り  (熊野市 )
2020年08月27日
7 図書の感染防止対策に  鵜殿図書館に除菌機設置  (紀宝町 )
2020年08月27日
8 日差し受け胚珠膨らむ  光泉寺「子授けイチョウ」  (古座川町 )
2020年08月27日
9 薬物乱用「ダメ。ゼッタイ。」  漫画など通して防止啓発  (和歌山県 )
2020年08月27日
10 子どもの成長に笑顔  3保育所でプール参観  (那智勝浦町 )
2020年08月27日
11 地元漁業の理解深める  宇久井中で海洋教育  (那智勝浦町 )
2020年08月22日
12 環境に優しいまちづくり目指し
 「つれもてエコら」が畑を  (那智勝浦町 )

 那智勝浦町北浜の北浜公園にこのほど、誰もが自由に野菜を収穫できる「どうぞの畑」が設置された。この珍しい畑は同町の子育て世代の母親などで組織する「つれもてエコら」(井藤朋子代表、以降「エコら」)が管理している。エコらの活動や、畑設置の経緯などを取材した。

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■つれもてエコらとは



 エコらの代表を務める井藤さんは以前から地球温暖化や環境問題について調べていたところ、SDGs(エスディージーズ=持続可能な開発目標)に触れる機会があり、エコロジーに関する活動を決意。自身のみでは限界があると考え、友人などに声を掛け、昨年12月に結成。メンバーは現在11人。

 井藤さんは「地球環境に配慮した生活を一人一人が意識することでつながりが深まり、各地域に広がっていくと思う。環境に優しい町づくりが目標」と話した。

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■活動については



 初協議の際には個人的に実施しているエコなど意見を出し合い、意識の共有を図った。現在は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、メンバーが集まることはできないが、各個人で「子どもといっしょにごみ拾い」「買い物の時点からごみの削減を考える」「生ごみの埋め立て処理」などに取り組んでいるという。

 コロナ終息後には他の団体との交流や勉強会の開催、ごみを出さないフリーマーケットや不要となった子ども服を譲り合う催しも視野に入れている。

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■どうぞの畑



 イギリス北部のトッドモーデンという町には至る所に食べられる植物が植えられており、誰もが収穫可能なため「食べられる町」として注目されている。それにヒントを得た井藤さんは、エコらの活動として同町でも取り組もうと考え行動を起こした。

 エコらは親子連れが集まる北浜公園に畑を作ることを同町に提案し承諾された。町はこれまでも快適な公園づくりのために利用者からの要望を受け、築山などの設置も行っている。

 畑は今年7月に完成。井藤さんの知人から譲り受けた土を入れ、土質を改善後、メンバーで植え付けを行った。

 現在はミニトマト、ナス、インゲン豆、ヘチマ、モロヘイヤ、バジルなどが育っており、水やりなどの協力を行う近隣住民もいるという。

 「どうぞの畑」は思いやりが学べる絵本として知られる「どうぞのいす」から名付けた。井藤さんは「子どもたちに、普段食べている野菜が育つ姿を見て、学んでもらいたい。この畑を見に来た人、収穫に訪れた人たちが交流してくれたらうれしい」。

 今後については「この畑が町全体に広がり、町内外の人たちや観光客の皆さんで収穫できたら楽しい。私たち自身がわくわくする町に住みたいし、子どもたちにもそういった町を残したい」と語った。

(2020年8月22日付紙面より)

どうぞの畑が設置された。(右から)井藤朋子さんと娘の心春(こはる)ちゃん、心咲(みさき)ちゃん=14日、那智勝浦町の北浜公園
誰でも収穫できる
2020年08月22日
13 野菜づくりの基礎学ぶ
 生涯現役スキルアップセミナー  (新宮市 )

 新宮市生涯現役促進地域連携協議会は20日、市役所別館で令和2年度第1回生涯現役スキルアップセミナー「野菜づくり体験~野菜を育てるには~」を開催した。JAみくまの営農経済部営農販売課の清水重良さんが、家庭菜園の基礎知識について講演。参加者は家庭菜園に生かすことのできる方法や条件を学んだ。

 セミナーは市在住の55歳以上の中高年齢者を対象に、就業を希望する人と雇用を希望する企業や事業所の双方のマッチングを行い、中高年齢者の雇用の促進と生きがいづくりの場への参加などの支援を、和歌山労働局の受託事業として実施している。

 清水さんは野菜作りにおいて土づくりが最も重要であると説明。「物理性」「化学性」「生物性」の3要件が交じり合った土が良い土の条件と解説した。

 良い土の作り方として堆肥や石灰類、肥料の投入を挙げ、「肥料の投入は引き算でなく足し算。少しあげ、変化を見て少ないようなら足してほしい。毎日見に行くことも大切」と話した。

 アドバイスとして「まんべんなく日が当たる南北方向を条件に畝をつくり、できるだけ高くする」「種や農薬の情報を見て詳細を把握する」などを挙げた。

 同じ場所で同じ作物を続けて作ることで特定の病害虫や病原菌が増えるなど、生育が不良になる連作障害に触れ、「エンドウなどのマメ科だと5年以上、ナス科やウリ科だと3年以上作付けができない」と話した。

 清水さんは「分からないことがあれば農協にお気軽に相談を。時間をいただければ直接お伺いします。失敗はプロの農家さんでさえある。めげずに楽しんで頑張っていただけたら」と締めくくり、質疑応答が行われた。

 新宮市在住の田戸路郎(みちろう)さん(71)は「良い勉強になったので、これからも野菜づくりを頑張ってみようと思いました」と話した。

 9月3日(木)には2回目のセミナーを予定しており、同市緑ヶ丘にある恵広場で実際に野菜の種を植える実習を行う。清水さんらが指導する。

 なお、25日(火)には第2回の「英語を学んで外国人におもてなし」が実施されるほか、第3回は「川舟の船頭育成セミナー」も行われるという。

(2020年8月22日付紙面より)

野菜づくりの基礎知識を学んだ=20日、新宮市役所別館
清水重良さん
2020年08月22日
14 大きな壁面に民話再現
 一枚岩「守り犬の影」  (古座川町 )

 古座川町相瀬にある国指定天然記念物・一枚岩で晩夏の風物詩「守り犬の影」が出現時期に差し掛かった。

 一枚岩の川向かいにある犬鳴岩の影が日差しの加減で一枚岩の大きな壁面に映り込んだときに見られる現象。年2期、晩春と晩夏に出現時期があり、現地の案内板は4月19日前後と8月25日前後の数日間が見頃と伝え、午後5時前後にほえかかるような犬の影を見ることができる。

 晩春の影はかすみがちだが、晩夏の影は比較的鮮明に映る。出現時期中は日々下流側から上流側へ移動するように映り込む場所がずれていく。地元では物産販売所のデッキ~道の駅一枚岩駐車場の上流側付近がお薦めの観賞位置といわれている。20日現在、週末から雨天傾向に転じるとの予報が出されているため、午後5時ごろに夕日が差すかどうかを見計らった上で見に行くのが無難だ。

 守り犬は一枚岩に伝わる民話に登場する動物。民話は岩が好物の魔物が浦神や高池(現池野山)など所々で岩をかじりながら古座川をさかのぼり、一枚岩にかみつこうとしたところで蔵土(くろづ)から現れた犬がほえかかり追い払ったという内容で、一枚岩に虫食い状の風化があまり見られない理由をそう伝えていたとされている。

 守り犬の影は町民が愛犬の姿をなぞらえる影として気付いたことがきっかけとなり、民話再現絵巻としてにわかに観賞を集めるようになった。その評判を背景にしてイラストレーター・ムロケイスケさんが守り犬をキャラクター化。道の駅瀧之拝太郎の「瀧之拝太郎」(兼同町マスコットキャラクター)、同駅虫喰岩の「ムッシーくん」と並ぶ同駅一枚岩のマスコットとして親しまれるところとなっている。

(2020年8月22日付紙面より)

一枚岩の壁面に映り込む「守り犬の影」(左)=19日、古座川町相瀬
2020年08月22日
15 楽しいと思うサッカーを
 トルベリーノ・クロシオFC代表・北野泰宏さん  
2020年08月22日
16 ハチも熱中症対策?  全国的な猛暑続く  
2020年08月22日
17 小学生が「坐禅」で心身整える  東正寺で40年目の「夏季禅林」  (紀宝町 )
2020年08月22日
18 当選491本を決める  サマープレゼント抽選  (串本リリースタンプ会 )
2020年08月22日
19 半年ぶりの読み聞かせ  宇久井保に「おはなし玉手箱」  (那智勝浦町 )
2020年08月22日
20 ママも子どもも笑顔になる「疲れない食育」
 【第18回】夏のお酢パワー  

 長い梅雨が明けて、うだるような暑さになりました。子どもたちが外で遊ぶのも、熱中症にならないか心配ですよね。こうも暑い日が続くと、食欲がなくなってきたお子さんもいらっしゃるのではないでしょうか? 今日はそんな夏バテにぴったりなお酢のお話をしようと思います。

 お酢はその歴史は古く紀元前5000年ほど前からあったといわれています。元々はお酒が原料の調味料です。日本食でも、おすしや酢の物に使われてきましたよね。お酢の「すっぱさ」は酢酸という成分です。これは殺菌作用もあるため、食中毒の原因となる菌の繁殖を抑えて食べ物を傷みにくくしてくれる成分です。夏は食中毒が怖い季節でもありますから、お酢とお魚などの組み合わせもオススメです。マヨネーズが保存料いらずなことも、このお酢の殺菌作用のおかげと言えます。またお酢の酸味は、味覚や嗅覚を刺激して、唾液や胃液の分泌を促すといわれています。これによって食欲増進につながるのです。さらに、お酢には代謝を活発にして、摂取した食べ物を効率よくエネルギーに変える力があります。つまり、疲労回復にも効果的ということです。スポーツの後などに、糖分を摂取するといいと言いますよね。これはグリコーゲンが疲労回復に効果的だからですが、そのグリコーゲンも、お酢と一緒に取ることでより効果的に補給できるといわれています。他にも、お酢には脂肪の蓄積を抑える効果や、腸内環境の改善、高血圧の抑制効果などたくさんの効果があることが分かっています。

 数あるお酢の効果の中で、私が一番注目しているのは「減塩効果」です。実は料理にお酢を使うことで、減塩できることが分かっています。お酢には塩が入っているわけではありませんが、酸味が物足りなさを補ってくれるんです。小学校低学年の子どもを対象にした味覚の研究にこんな記述があります。「塩を『酸っぱい』、酢を『しょっぱい』と表現する子供がいた」(三重大学教育学部研究紀要「小学校低学年を対象とした味覚授業の実践」、2016年)。「酸っぱい」と「しょっぱい」はとても似ているんですね。塩分の取り過ぎが健康を害することはさまざまな分野で証明されています。減塩のためにもぜひお酢を取り入れてみてください。

 さて、お酢の料理を番組で紹介するとき、打ち合わせで必ず質問に上がるのが「お酢の種類」です。家庭でよく使うのは穀物酢か米酢ですよね? 穀物酢は麦やトウモロコシ、米などから造られます。酸味が強いので、煮物などの加熱調理に使うのがオススメです。一方米酢は、米とアルコールで造られたお酢です。酸味がまろやかなので、おすしや酢の物など加熱しない調理によく合います。夏バテにも健康にも良いお酢。ぜひこの夏、食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか?

(2020年8月22日付紙面より)

2020年08月22日
21 お悔やみ情報