診療所医師が奮闘 (北山村、7月に「お祭り」開催へ )
北山村にある唯一の医療機関「国保北山村診療所」の医師、内川宗大(むねひろ)さん(36)が「医療が溶け込んだお祭り」のようなイベントを企画し、7月の開催に向けて動いている。「地域医療っておもしろい」。それを体現しようと飛び地の村で奮闘している。
和歌山市出身の内川さんは自治医科大学を卒業し、医師として8年目となる2020年4月に村診療所に赴任した。医師不足解消のため設立された自治医大では、卒業後の一定期間を地域医療に従事させる仕組みがある。最後の2年間を村で勤務し、日赤和歌山医療センターに移ったが、「誰かがどこかで親身になっていれば重症化は防げるんじゃないか。もう一度、北山村で地域医療を実践したい」と感じ、23年4月に村へ戻った。
「その地域を好きになること」。地域医療に向き合う自分なりの姿勢もできた。「人材不足を根底とする問題が深刻化している。医師として育ててくれた地域に何か残し、貢献したい。『地域医療×おもしろい』を体現し、地域を支える医療福祉人材の確保につなげたい」と見据える。
イベント名は「わっしょ医‼北山村」で、7月6日(土)におくとろ公園で開催予定。「わくわくするお祭りに医療が溶け込んで、気付かない間にみんなの懐に入り込めたら」と思いを込めた。
インスタグラムには診療所アカウントとは別に専用のアカウントを開設。「分からないなりに一生懸命やってる」と悪戦苦闘しつつ、飾らない文面で発信している。
開催資金の足しにしようと投資家に出資を依頼するユーチューブの「令和の虎」にも出演。「虎」と呼ばれる投資家たちの厳しい意見を浴びながらも真っすぐな思いをぶつけ、希望の金額を得た。
飲食店の出店やステージイベントなどの盛り上がり要素を充実させつつ、医療体験ブースは縁のある医療介護福祉従事者に協力を求めながら準備を進めている。実行委員会が主催し、村、株式会社じゃばらいず北山が共催する。
内川さんは「医療に関心がある、ないにかかわらず、まずはイベントを楽しみに来てほしい。これを入り口として村や地域医療に関心を持ってもらえれば、つないでいく仕組みも考えている」と話していた。
(2024年3月31日付紙面より)
こども家庭センターに (新宮市 )
児童福祉法の一部改正により、市町村は児童福祉と母子保健の連携を図り、妊産婦、子育て世帯、子どもへ一体的に相談支援を行う「こども家庭センター」の設置に努めることが、2024度からの努力義務となった。新宮市はこれを受け、市保健センターの名称を4月1日(月)から「新宮市こども家庭センター」に名称変更し、より充実した支援体制の構築を目指す。
保健センターは子育て世代包括支援センターが母子保健の、子ども家庭総合支援拠点が児童福祉の相談窓口となっていた。新たなこども家庭センターでは、子どもや子育て世帯の課題に一体的に対応する総合窓口となる。「どなたでもお気軽にご相談ください」と呼びかけている。
開設時間は、祝日や年末年始を除く月曜日から金曜日の、午前8時30分から午後5時15分。問い合わせは、子ども家庭センター内の子育て推進課(電話0735・23・3344)。
なお、センター内には四つの係がある。▽妊娠、出産、乳幼児期の健康や発達に関することは「母子保健係」(電話0735・23・4511)▽未就園の子どもたちと保護者のための居場所の提供は「子育てひろば『つぼみ』」(電話0735・29・7246)▽子育ての問題に関することは「子育て支援係〈家庭児童相談室〉」(電話0735・23・3740)▽各種手当・助成や保育所に関することは「子ども未来係」(電話0735・23・3344)―まで。
(2024年3月31日付紙面より)
看護師の東一代さん講演 (那智勝浦町 )
那智勝浦町福祉健康センターで28日、4年ぶりの町主催の健康講演会「緩和ケアって何?~がん患者の痛みや不安に寄り添うケア~」があった。町立温泉病院・訪問看護ステーションちょうりつの緩和ケア認定看護師・東一代さんが講話し、約30人が、がん患者の苦痛を和らげるケアの世界に触れた。
東さんは緩和ケアについて「がんなどの重い病を抱える患者やその家族一人一人の、身体や心のさまざまなつらさを和らげ、より豊かな人生を送ることができるよう支えるケア」と紹介。
中世ヨーロッパで旅の巡礼者らの安息場所(ホスピス)から始まり、近代以後はハンセン病や結核、がん、エイズなど治療困難な末期患者を対象とするようになったと歴史を紹介。現代では医療の進歩でさまざまな病が治療できるようになった一方、「治療が長期化し、死が迫った時期だけでなく、治療中もよりよい生活を送れるよう支援することが必要になった」と述べた。
近代ホスピス運動の母と呼ばれるシシリー・ソンダースが提唱した「全人的苦痛」の概念に言及。がん患者は▽身体的苦痛(がんや治療によって感じる痛み)▽精神的苦痛(恐怖や怒りの感情)▽社会的苦痛(社会との隔たりから感じるつらさ)▽スピリチュアルペイン(痛みを運命として捉えてしまうつらさ)―が複合したつらさに直面しているとし「薬で痛みを取ることで、不安も減り、社会復帰もできるなど、良くも悪くもそれぞれの苦痛が影響し合っている」と述べた。
医師や家族と共に釣り好きの患者の外出を支援したエピソードから「病気ではなく『つらさ』『困っていること』に焦点を当て、その人らしさを支えることが緩和ケアの本質。現代では慢性心不全や神経難病、認知症にも広がっている」と語った。
役場福祉課から、那智勝浦町のがん検診の現状についての講話もあった。町内では2017~21年の全死亡者1337人中356人ががんで亡くなっている。町が実施する検診のうち、乳がん・子宮頸(けい)がんで受診率が低く、肺がん・大腸がんは要精密検査となった後の未受診率が高いとし「75歳以下の方には5月下旬に受診券を送付するので、必ず受診を」と呼びかけた。
(2024年3月31日付紙面より)
20周年記念コースターも (那智勝浦町 )
豊かな水資源を全国に広報しようと那智勝浦町が製造を進めていたオリジナルラベルの「那智勝浦町ボトルドウオーター『熊野の水』」が完成し、29日に役場町長室でお披露目があった。
水や水源地、水源涵養(かんよう)林の保全啓発を目的に、那智原始林の水で約4万本を製造。ペットボトルよりもリサイクル率の高いアルミ缶を採用し、賞味期限5年の長期保存水で災害備蓄の側面もある。ラベルは「あらたまデザイン」が手がけた。
「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録20周年のノベルティーとして熊野材を用いたヒノキのコースター1000個も製作。熊野三山、三筋の滝(那智の滝の別称で、三筋に分かれて流れ落ちることから)、那智原始林にある「二の滝」「三の滝」などから着想を得て、3本の木を革ひもで結ったデザインにした。
堀順一郎町長は「世界遺産を構成する町内の熊野那智大社、飛瀧神社、那智山青岸渡寺、補陀洛山寺を巡っていただくツアーなどを那智勝浦観光機構と企画しており、その記念品としたい。将来的には土産物としての販売も検討したい」と話していた。
(2024年3月31日付紙面より)
駅で苗木を育てて植林 (JR西とソマノベース )
JR西日本和歌山支社とソマノベース(田辺市・奥川季花社長)は、和歌山県内の特急くろしお停車駅で、紀州備長炭の原木であるウバメガシの苗木を育て、熊野古道近隣のエリアに植林する「戻り苗」プロジェクトを始めた。28日は新宮駅などに設置。脱炭素や災害防止などを目指す。
戻り苗は、ドングリから苗木を育て、山に植林する取り組み。ソマノベースはドングリが入った戻り苗キットを、環境問題などに関心のある個人や企業にいったん購入してもらい、2年間育てた後に戻してもらって植林している。土砂災害リスクの軽減も念頭に、場所は放置山林などを選んでいる。同支社は、カーボンニュートラルを目指していることもあり、取り組みに賛同。さらに減少しているウバメガシの保護も考えて樹木を選んだ。
場所は▽和歌山支社▽和歌山駅▽海南駅▽新宮駅▽紀伊勝浦駅▽串本駅▽白浜駅▽紀伊田辺駅▽御坊駅―の9カ所。紀州ヒノキで作られた、24本挿しのラダーシェルフを2台ずつ、合計で18台432本を設置する。各駅では駅員が水やりを行う。2年で30㌢前後になる予定という。新宮駅では、1年育てた苗木とドングリを半数ずつ、駅構内に設置した。
同支社地域共生室の御堂直樹課長(48)は「環境保全、森林づくり、ウバメガシ保護、熊野古道の保全など、いろんなストーリーを持たせた取り組み。駅利用者や地域も一緒に環境問題に向き合い取り組んでほしい。愛着ある木を見つけて2年間、成長を感じてもらえれば」と話した。
ソマノベースの奥川社長(28)は、那智勝浦町天満の出身で、新宮高校の卒業。戻り苗の発想の原点は、紀伊半島大水害の経験だった。「植林で防災につなげたいとの思いがあった。新宮駅は通学で毎日のように利用したし、勝浦も地元。そういう場所に置いてもらえるのはうれしい。これを通して大水害の教訓を思い出したり、経験していない子どもらが大水害を知ってくれることにつながれば」と語った。
(2024年3月30日付紙面より)
4~10月の三季運用に向け (串本町 )
串本町くじ野川にある橋杭園地で28日、防砂ネットの撤去作業があった。
南紀串本観光協会(島野利之会長)が4月1日(月)から始める三季運用(4~10月)に向けた準備の一環。この防砂ネットは冬に吹き抜ける風で舞い上がりやすい砂の飛散を抑える目的で設置していて、三季運用のシーズンオフとなる冬場に砂浜へ張っている。
直近では昨年12月に幅1㍍の農業用樹脂ネットを長さ17㍍で切り出したもの20枚を、マツの防風林が途切れて砂が国道一帯まで飛散しやすいビーチハウスラパン前の砂浜(海水浴場の遊泳区域と面する砂浜)へおおむね波打ち際に垂直方向となるよう約5㍍間隔で設置。この日は同協会の会員や職員と町産業課の職員8人が作業に参加し、半ば埋もれるほどに飛散を食い止めた防砂ネットを砂から引き出し支柱も引き抜いて砂浜を自然の状態へと戻した。
同協会は三季運用中、同ハウスを営業してシーカヤックなど各種マリンアクティビティーのレンタルやツアーの提供(その予約は通年で受け付け中)をし、7~8月に海水浴場を設置して活用を図っている。
来月21日(日)には機運醸成を目的としたイベント「橋杭ビーチオープンフェスタ」を初の試みで朝市企画と連動させた形で開くとし、現在内容を煮詰めている。次の三季運用に向け、島野会長(56)は「先日は少し残念だったがロケットの方もどんどん進んでいるし、打ち上げを心待ちにするたくさんの皆さんが串本へ来られると思う。橋杭ビーチでは4月にオープンフェスタがあり、その先も新たなイベントや既存のイベントをどんどんとやっていきたいと思うので、たくさんの皆さんにお越しいただければ」と思うところを語った。
同ビーチの問い合わせは同協会(電話0735・62・3171)、各種マリンアクティビティーの予約はビーチハウス・ラパン(電話090・3356・8305)まで。
(2024年3月30日付紙面より)
民生児童委協が研修会 (新宮市 )
和歌山県社会福祉協議会地域福祉部副部長で、災害ボランティアセンター所長でもある南出考氏による「災害時における民生委員のやるべきこと」の講演が25日、新宮市福祉センターであった。約40人が参加。災害時の行動や備えについて考えた。
新宮市民生委員児童委員協議会(小内潤治会長)の研修会として実施した。南出氏は、自らも支援に出向いた能登半島地震に言及。「家屋倒壊の被害が多数発生している。被災者は、いまだに厳しい避難生活を余儀なくされている。断水の復旧は遅れており、まだまだ水が通っていない状況」などと話した。
被災地の家屋の写真を映し出し「家屋が50㌢以上沈下していた。液状化した地域もたくさんあった。印象的だったのは、門松やしめ縄が飾られたままの家が多かった。誰も悪くないのに日常が一変していた。生活の落差を思うと胸が締め付けられた」と語った。
「生かされた命の尊さ」に言及。「自分自身の役割は何か。被災によりつながりをなくした人もいる。そういう人とつながって励ますために動いている気がする。一人ではできないことを、仲間と協力してできるようにしていくことが役割かと」と力を込めた。
人間関係の構築の重要性も強調した。「被災地に入ると、絆やつながりが大事とよくいわれる。普段つながりを強める取り組みをしているだろうか。孤立や孤独を深めてしまわないように、お互いが気にかけ合い、励まし合い生きていく。災害時も同じ。コミュニケーションを取りつながることが大事」と訴えた。
発災後の関係構築は困難であることを説明。「だからこそ、日頃からつながりを築いておく必要がある。初めましてをできるだけなくしておくのが、備えの一つ。日頃から顔の見える、笑顔の見える関係づくりを」と呼びかけた。
「被災者はよく、防災のことを家族や友人、隣人ともっと話しておけばよかったと言う。災害はいつ起こるか分からない。備えができるうちはまだいい。誰もが防災の担い手。大切なものを守るため、失わないため」と伝えた。
(2024年3月30日付紙面より)
那智勝浦町や串本町など
那智勝浦町や串本町をはじめ県内5カ所に、アニメ「ポケットモンスター」(ポケモン)のキャラクターがデザインされたマンホールのふた「ポケふた」が設置されることになり、そのお披露目式が25日、和歌山県庁であった。各町の名所を背景にした、色鮮やかなデザインが明らかになった。
ポケモンは、ゲームソフトを原作としたテレビアニメ。人気を博し映画化もされ、スマートフォン向け位置情報ゲーム「ポケモンGO」も登場している。そのキャラは森やUFOなどさまざまなものを象徴しており、各町に適したキャラが選ばれてポケふたにデザインされている。
那智勝浦町は那智の滝を背景に森のキャラとなっており、大門坂駐車場に4月中旬から4月下旬に設置を予定。串本町はロケットを背景に星、宇宙生物、磁力のキャラが配され、設置は4月下旬の予定となっている。設置されたポケふたは順次、「ポケモンGO」のゲームマップ上に登場する。
その他の設置場所は、和歌山市、高野町、白浜町。ポケふたは株式会社ポケモンが自治体へ無償で寄贈し、設置や管理は自治体が行う。3月19日現在で33都道府県に333枚が設置され、それぞれが専用デザインとなっている。
(2024年3月30日付紙面より)
宇久井小に「紀伊」のサボ (那智勝浦町 )
那智勝浦町立宇久井小学校の校長室に、2枚の列車の行先標(通称・サボ)がある。青には「紀伊勝浦←→東京」、白には表裏にそれぞれ「東京行」と「紀伊勝浦行」の文字。かつて東京―紀伊勝浦間を運行していた夜行列車「紀伊」のものだ。
サボは宇久井小の倉庫に眠っていたのを、同校の芝﨑勝善校長(60)が発見。「なぜ宇久井小にあるのかは分からないが、自分たちの世代にとっては東京へ大学受験に行く時に乗った思い出の列車」と懐かしみ、校長室へと持ち帰った。
当地方では、紀勢本線の全線開業により1959(昭和34)年に東京―新宮間で夜行急行列車「那智」が運行開始。64(昭和39)年に紀伊勝浦まで延長され、68(昭和43)に「紀伊」と改称した。75(昭和50)年には特急列車(通称・ブルートレイン)に格上げ。84(昭和59)年に廃止されるまで、毎日上下1本ずつ、約11時間、621㌔の道のりを走った。
下り列車は明け方に紀伊勝浦駅に到着し、新宮駅の客貨車区に戻って清掃や整備を済ませ、夕方には再び紀伊勝浦駅へ。機関車を方向転換させた後、乗客を乗せて東京へ出発。途中で伊勢や能登などからの列車と連結し、翌朝乗客が目を覚ますと、そこは大都会東京の街だ。若かりし頃の思い出に残っている人も多いだろう。
紀伊号の運行に関わった新宮駅の道本隆文駅長(60)にサボについて問い合わせたところ「1982(昭和57)年に18歳で国鉄に入社し、最初の3年間の配属が新宮駅。当時は紀伊号の機関車の連結や切り離し、ブレーキのエアホースの付け替えなどをしており、ラストランの日には多くの人が見に来ていた。自分たちの時はDD51形ディーゼル機関車が牽引していたが、当時のサボはロール式。さらに古いものだと思う」と語った。
「国鉄」時代の資料を集める、熊野学研究委員の中瀬古友夫さんは「特急格上げ前の客車で使われていたもの」と推測。「想像だが」と前置きしつつ「特急列車に切り替わる前日、紀伊勝浦駅に到着した旧列車は、回送列車として品川の車両基地へ帰っていく。その際に外したサボを、誰かが小学校に持って行ったのでは」と話していた。
「紀伊」が運行終了してはや40年。今年も多くの若者たちが、不安と期待の入り交じった表情で、都会へと巣立っていく。世界を見て、大きく成長して、いつかまたこの町の、この駅に帰ってきてほしい。
(2024年3月27日付紙面より)
災害に備え研修会 (那智勝浦町脇入区 )
那智勝浦町の脇入区(濵口佳男区長)は24日、同区の脇仲会館で南海トラフの大地震などの災害に備え、「非常時避難所運営研修会」を開いた。14人が参加し、和歌山県が開発した「きいちゃんの災害避難ゲーム」を楽しみながら、避難所運営を机上で体験した。
研修会は同町役場総務課防災対策室主査の藤社祐樹さん、主事の山本将平さんが講師になり開催。机の上に避難所になった架空の小学校「きいちゃん小学校」の図を広げ、参加者は施設管理班長、ボランティア班長などの役割が与えられてゲームがスタート。対策室の藤社さんらが「トイレはどうする」「駐車場はどこへ」「避難者名簿はどんな内容が必要」「ペットの受け入れ場所はどこ」などの問題を出した。参加者からは「思いも寄らなかった避難者への配慮などの注意点に気付くこともあった」という声も聞かれた。
ゲーム後、参加者は防災対策室が撮影した能登半島地震の被災地の写真を見ながら、避難所の運営状況や家庭での備蓄品などの説明を聞いた。
濵口区長は「有意義な研修会だった。机上の訓練だが、いろいろな知識を吸収してもらえたと思う。今後は実際に小学校での訓練も必要ではないかと感じた」と話した。
(2024年3月27日付紙面より)
国際鯨類施設で竣工式 (太地町 )
古式捕鯨発祥の地として知られる太地町の「国際鯨類施設」で23日、竣工(しゅんこう)式が開かれた。約90人の来賓が出席して完成を祝し、今後の研究発展に期待を寄せた。
同町が目指す「くじらの学術研究都市構想」の拠点施設で、平見の高台に建設された。調査捕鯨などを行う日本鯨類研究所(以下、鯨研)の太地事務所や約3万冊の図書室、研修ホール、会議室などで構成される。延べ床面積は1879・92平方㍍、鉄骨造り2階建て。建設費約18億円。
式典では、三軒一高町長が1878(明治11)年の大背美流れや南氷洋捕鯨の歴史に触れ「私たちは過去・現在・未来、鯨との関わりをやめない。この地で生きんがため、先人たちがもがき苦しんだ歴史を必ず後世に伝えなければならない」と宣言。「世界に開かれた鯨の学術研究都市を目指し、今後も懸命の努力をする」と誓った。
来賓の自民党の二階俊博元幹事長は「この地は命を懸けて鯨と相対してきた。捕鯨を理解してもらうよう、自信と誇りを持って取り組んでいかなければ」と祝辞。鶴保庸介参院議員、和歌山県の下宏副知事、水産庁の森健長官、外務省経済局の片平聡局長も祝いの言葉を述べた。
テープカットの後には餅まきがあり、町民ら約150人が歓声を上げ、3俵(約180㌔)の紅白餅を拾った。
式典後、鯨研の藤瀬良弘理事長は、2011年の東日本大震災で宮城県の鮎川実験場が津波の被害を受け、東京では標本などの保管が難しかったところ、太地町が無償で保管を引き受けたことに感謝を述べ「非常に立派な施設で驚いている。今後は施設に負けない研究成果を、世界へ発信していきたい」と抱負を語っった。施設の利用開始は4月1日(月)。
(2024年3月27日付紙面より)
田並でワカイミソラ寄席 (串本町 )
串本町田並にある田並劇場で24日、公演「ワカイミソラ寄席春場所」があり約60人が創作劇「子別れ・熊野篇」や創作落語「寺子屋問答」を鑑賞した。
アマチュア落語家・熊野家三九郎(旧芸名・熊野亭雲助、本名・鈴木俊朗)さんと劇団ワカイミソラによる、劇を交えて落語の世界を広げる公演。今回は昔ながらの大衆劇場で上演したいという思いで田並劇場を会場に選び、来場を呼びかけた。
創作劇「子別れ・熊野篇」は、古典落語「子別れ」を原作にしその人情談を大正期の新宮に当てはめた作品。台本を書いた谷口克朗さん(父役)と羽山真弓さん(子役)、谷口美加さん(母役)が主演し、今回は筋書きの表現力を増すため父役の回想シーンで大石誠之助役(川口一夫さん)も登場する工夫を加えて子がかすがいとなり夫婦がよりを戻す流れを演じた。
創作落語「寺子屋問答」は中学時代から半世紀以上にわたって落語に打ち込んできた熊野家三九郎さん作、熊野家さんの大学時代の同期で桂ざこばさんの一番弟子・桂塩鯛さんがネタおろしした作品。今回は創作時点の内容で高座に臨み、寺子屋問答(=卒業試験)で子どもとその親、寺子屋の師匠が珍問答を重ねる様子を口演した。
昨年7月の同寄席夏の陣(新宮市の西村伊作記念館外庭で実施)、今年1月の同寄席新春顔見世興行(新宮市のCOLORsで実施)に続き3回目となる今回のコラボ公演は初の市外実施。その接点づくりに尽力した谷口克朗さんは「回を重ねてこの公演の楽しさがだんだん分かってきました。今後についてはまだノープランですが今日は大勢の皆さんにお越しいただき、折があればこちらでもまた公演してみたいと思いました」と語った。
(2024年3月27日付紙面より)
移動支援や免許返納促進 (新宮市 )
新宮市が自動車の運転免許を持っていない75歳以上の高齢者などにタクシー券を配布することが、市議会での予算の成立により決まった。金額は1人当たり1万2000円分。4月から対象者に申請書の送付を行う予定という。
移動手段のない高齢者などへの支援や、運転免許返納の促進を目的とした取り組み。新宮市は高齢化率が2月末の時点で38・87%に達した「超高齢化社会」となっており、安全面を考えればなるべく高齢者に運転免許を返納してもらうのが望ましい。
しかし都市部と比べ、列車やバスなどの公共交通網が未発達なため、高齢者も自動車がなければ生活が困難で、運転免許を返納しづらい実情がある。旧市外はなおさらで、山間部は買い物や通院も自動車なしでは不便極まる。これらの解決の一助になればと市は事業実施を決めた。
対象は具体的には、新宮市内に在住(施設入所者を除く)する75歳以上で、最初から運転免許を持っていない人。または全年齢で、すでに運転免許証を返納したことを示す書類がある人となる。さまざまな事情で運転免許を返納した若年者にも考慮し、年齢に下限は設けず書類があれば対象と認めるという。
ただ市は、市内在住の75歳以上は把握しているものの、返納済みも含めた運転免許の有無は把握していない。このため、申請書は75歳以上の市内在住者全員に送る予定という。6000人から7000人ほどいるため時間がかかるが、担当課は「6月までには送りたい」と考えている。75歳未満の免許返納者に関しては、基本的に窓口での申請となる。
タクシー券は来年3月末まで使える。市内で営業する全てのタクシー会社で利用できる。500円もぎりの24枚券となる。
(2024年3月24日付紙面より)
三上幸夫教授が講演 (那智勝浦町 )
那智勝浦町立温泉病院で19日、広島大学病院リハビリテーション科の三上幸夫教授による講演会「令和6年能登半島地震における災害リハビリテーション医療~広島JRATの活動と今後の課題~」があった。新宮・東牟婁の市町村と県から保健師ら約40人が出席し、被災地支援におけるリハビリ視点の重要性を学んだ。
温泉病院と、院内に設置されている和歌山県立医科大学のリハビリテーション・スポーツ・温泉医学研究所が主催。日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)は、リハビリの観点から避難所の環境アセスメントや、生活不活発病、災害関連死の予防を行うチーム。三上教授はその一員として、1月に能登半島地震の被災地で活動した。
三上教授はJRATの結成経緯について「阪神・淡路大震災後には拠点病院や広域搬送ネットワークの整備が進められたが、2011年の東日本大震災では、長引く避難所生活で精神的に病んだり、身体機能が衰えてしまったりする方が多く出た。体や心のケア、保健医療の重要性が見直されて発足した」と説明。「救命救急を担う災害派遣医療チーム(DMAT)とは逆に、JRATは被災者が地域社会に戻っていくのを支援する『出口戦略』を担う」と述べた。
能登半島地震の被災地について「医師や理学療法士、作業療法士などのチームで現地入りした。目立つけががなくても、身体の活動面に着目すると『避難中に膝を打って立てない』『片付けで腰が痛くて動けない』と圧迫骨折や腱板(けんばん)断裂が疑われる方、コルセットやつえが必要な方が多くいた」と言及した。
石川県輪島市門前町で実施した▽起き上がれるか▽立ち上がれるか▽片足立ちできるか―を基準としたリハビリ視点のトリアージ手法も紹介した。
課題面として、JRATの存在や意義が十分認知されていなかったことや、被災地における福祉用具・義肢装具の入手の困難を挙げ「逃げることも大切だが、逃げきった方々にいかに地域社会に戻っていただくのか、災害関連死をどう防ぐのか。今後のため、和歌山県のJRATのことも知っておいてほしい」と呼びかけた。
堀順一郎町長は「保健師だけでなく、多くの方に理解いただく必要がある話。その第一歩」と話していた。
(2024年3月24日付紙面より)
観世流 武田友志さん (熊野速玉大社 )
観世流能楽師の武田友志さんの歌と舞の奉納が20日、熊野速玉大社(上野顯宮司)であった。約20人が見守る中、古来より伝わる歌と舞を披露した。
武田さんは、重要無形文化財総合指定保持者で、26世宗家観世清和、父武田志房に師事。3歳で鞍馬天狗(てんぐ)「花見」で初舞台、海外公演にも多数参加し、小中学校生や外国人、初心者のためのワークショップなど、能の普及活動にも努めている。同大社では7年ほど前に能を奉納したことがあるという。
今回は前日に熊野那智大社で奉納したほか、那智勝浦町下和田の大泰寺で能の体験教室を開いていた。熊野速玉大社ではまず、拝殿で参拝。上野宮司はあいさつで、「新宮」の由来や熊野三神の来臨、熊野速玉大社の創始などを説明し「神様の大きな力を頂きよみがえる、熊野信仰に思いをはせながら奉納をいただければ」と話した。
奉納は同大社の双鶴殿で行われた。武田さんは能の歴史や能楽の構成、能面などを解説。「能面をゆっくりと下や上に向けて表情をつける。世界で顔で演技をしない芸能はなかなかない」などと話した。
この後、能の「高砂」と「羽衣」の歌や舞を披露。武田さんは低い声を響かせ、また扇を手にゆっくりと力強く舞った。参加者は静かに観覧し、盛んな拍手で称賛していた。
市内から訪れた50代女性は「能は神社で奉納しているのを見たことがあったが、ちゃんとゆっくりと見たのは初めて。近くで見られて良い経験をさせてもらった。興味深い話もされていて、今後も見てみたいと思った」と話した。
(2024年3月24日付紙面より)
鵜殿3組自主防災会が設置 (紀宝町 )
南海トラフ巨大地震に備えて、紀宝町鵜殿の鵜殿3組自主防災会(森倉賢一郎会長)は22日、地区内に地震・津波発生時の迅速な避難を呼びかける看板を設置した。
330世帯が所属する鵜殿3組自主防はこれまで、津波一時避難場所近くの高台に防災備蓄倉庫を建設、避難訓練の開催やチラシ配布などで、防災に努めてきた。
今回、多くの区民の目に付くよう、住宅地と道路沿いに看板を設置。「地震 津波 すぐ逃げろ」などとともに、家族が避難するイラストを添えた。
「1秒でも早く海抜20㍍を目指して避難してください」「家の耐震補強や家具の転倒防止を」「約1週間分の水・食料を自分で準備して」「避難場所や避難路を何度も確認して」などと記し、地震・津波への備えも呼びかけている。
看板は縦90㌢、横130㌢。鵜殿地区で新宮紀宝道路紀宝南ランプ他改良工事を請け負うユウテック株式会社(有城和哉代表取締役)が地域貢献の一環で協力し、4枚作成した。現在、2カ所に設置しており残り2枚も今後、取り付けるという。
ユウテックは防災備蓄倉庫の周辺整備にも協力しており、森倉会長(73)は「大変ありがたい」と感謝し「看板が地震・津波に対する防災意識向上につながれば」と期待を寄せていた。
(2024年3月24日付紙面より)
大物クロマグロに活気 (勝浦地方卸売市場 )
はえ縄漁による生鮮マグロの水揚げ量日本一を誇る那智勝浦町築地の勝浦地方卸売市場で20日朝、今年最大の269㌔のクロマグロが水揚げされ、市場が活気づいた=写真。釣り上げたのは清漁丸(宮崎県)で、山下寛正船頭は「大物でうれしい。今シーズンも頑張る」と語った。1㌔当たり6490円の値が付いた。
同じく宮崎県の第八長久丸が釣り上げた153㌔のクロマグロにも1㌔当たり6400円の値が付き「今年はマグロが少ないが、いい大きさのものが取れて良かった」と話した。仲買人らの他、「うちの船でも大物が釣れるように」と見に訪れる船員の姿もあった。
市場展望スペースを訪れた森脇佳寿美さん(18)は「家族旅行で来た。新鮮なマグロが並んでいてすごい。今日もこれからマグロを食べに行く」と話していた。
この日の入港は8隻で、水揚げは約80㌧。県漁連勝浦市場の太田直久市場長は「ビンチョウマグロが豊漁だったこともあり水揚げ量は伸びている。クロマグロは出足が遅めだが、今後に期待している」と話していた。シーズンは5月ゴールデンウイークあたりまで。
(2024年3月22日付紙面より)
国際研究集会記念し講演会 (新宮市 )
新宮市の丹鶴ホールで20日、国際科学掘削計画に関する市民講演会「地球の恵みを知り、災いに備える―和歌山から始まる世界への挑戦―」が開催された。近隣市町から大勢が参加し、地球掘削による最新の研究動向に触れた。
熊野地方では18日から、世界17カ国の研究者ら約150人が集う国際研究集会が開催されている。海底下の堆積物や岩石を掘削して地球の歴史や地震のメカニズム解明を目指す「国際深海科学掘削計画」(IODP)が今年9月に終了予定であることに伴い、後継プログラムの立ち上げを目指すもの。その記念で市民向け講演会を企画した。
開会に当たり田岡実千年市長が「地球掘削といえば、当地方では地球深部探査船『ちきゅう』が新宮港を拠点に行ってきた南海トラフ地震発生帯掘削がなじみ深い。歴史的瞬間を皆さんと共有したい」。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の大和裕幸理事長は「世界中の研究者たちの盛り上がりを感じていただければ」とあいさつした。
シンポジウムには東京大学地震研究所の木下正高教授、イタリア国立海洋物理学研究所のアンジェロ・カメルレンギさん、大阪公立大学の益田晴恵特任教授が登壇。
地球掘削の重要な研究テーマである「気候変動」について、アンジェロさんは、海洋底の堆積物調査によって分かった6500万年前から現代までの気候変動の図を紹介。「人間の活動の影響で、恐竜が巨大化した6500万年前と同じ温度まで気温が上昇している」と述べた。会場からの「人間が石油や石炭を使うことで、石炭紀や古生代レベルの温暖化は起こりうるのか」という質問には「古生代の気温が高い理由はまだ分かっていない。計算上、ある程度気温が上がれば揺り戻しがあるため、そこまではいかないのでは」と返答した。
司会の熊野家三九郎さんの「地震の前兆は分かるのか」という問いに、木下教授は「すぐではないが、可能性はある。掘削した穴に温度計や圧力計を設置しており、兆候をうかがうチャンスが増えている」と語った。
JAMSTECの江口暢久さんによる講演では、「ちきゅう」による調査研究を振り返り「今秋には世界中の研究者が『ちきゅう』を使い、2011年の東北地方太平洋沖地震から13年が経過した海底で、コア試料の採取や長期孔内観測に挑む。皆さんにも海底下で起きていることをお知らせしたい。航海に応援を」と話した。
益田教授は、身近な温泉に着目した研究を紹介。「温泉は通常の地下水にはない面白い成分を含み、地球深部のマントルと同じ組成を持つヘリウムが見つかることも」と述べ、「次に温泉に入るときは、そのお湯が流れてきた道のりを想像し、地球の営みを感じてほしい」と呼びかけていた。
(2024年3月22日付紙面より)
1年生対象にし宇宙教室 (串本古座高校 )
和歌山県立串本古座高校(榎本貴英校長)が13、14、19日の3日間、1年生89人を対象にした宇宙教室を実施した。生徒はロケットの概念などを教わり、水ロケットを制作。19日はグラウンドで飛翔実験をするなどした。
次年度から未来創造学科が始まり、現普通科3コースの後継2コースに加えて新たに宇宙探究コースが加わる同校。現1、2年生は次年度以降も普通科のカリキュラムで卒業を目指すが、だからといって学校の特色の一端となる宇宙教育には関係ないとはしたくないという思いもあり、宇宙教育専門教員の藤島徹教諭監修によるこの教室を計画した。
13日は座学、14日は水ロケット制作、19日は飛翔実験とまとめという内容で、座学ではロケットが飛ぶ原理や串本町から飛翔するロケット「カイロス」について紹介した。
そのイメージを持って制作では藤島教諭の「身近な材料で組み上げる」というこだわりに沿って、容量500㍉㍑の炭酸飲料用ペットボトルとA4サイズのクリアフォルダ、紙コップと紙パックから切り出したフィン(羽根)などを組み合わせて水ロケットを組み上げた。
基本構造は共通だがフィンや機体部分はアレンジしてよいとし、1年生が仕上げた水ロケットは千差万別。19日は藤島教諭の試射を見て手順をつかみ、6人一組で順番に打ち上げた。途中で軌道が曲がったりバランスを崩して落下したりする水ロケットも多い中、安定した放物線を描いて藤島教諭の試射以上に飛ぶ水ロケットもいくつかあり、最後はそれら全体の結果からロケットを飛ばす難しさや、難しい中にも成功の筋道があることを振り返って締めくくったという。
今回の教室実施について藤島教諭は「この経験を通して、ロケットを人ごとから自分ごとにしてまずは家族に伝えるところから始めてもらえれば」と監修に込めた思いをコメント。次年度はいよいよ宇宙に関心を持つ後輩が加わり学科は違っても同じ学校の生徒として共に励む流れとなるが、今回の教室はその連帯の架け橋の一つとなる理解を学年全体で共有する節目ともなった。
(2024年3月22日付紙面より)
ウミガメ公園防災拠点の完成式 (紀宝町 )
道の駅「紀宝町ウミガメ公園防災拠点」の完成式が20日、紀宝町井田のウミガメ公園に隣接する新施設であった。災害に強い道の駅への生まれ変わりに期待し、国土交通省中部地方整備局紀勢国道事務所と町の関係者らがテープカットした。
今後、発生が予想される南海トラフ地震などによる大規模災害発生時に救援や救護活動、緊急物資の搬送を迅速に行う活動拠点として、国交省と紀宝町が2019年度から事業を進めてきた。
国交省は防災倉庫(500平方㍍)、資材置き場(800平方㍍)、駐車場(1800平方㍍)を整備。今後、大型トラック、クレーン、土のうなどを配備する。
町は円筒形鉄筋コンクリート造り2階建ての一時避難場所を建設。高さ6・5㍍、床面積165平方㍍。海抜14・4㍍地点にあり、屋上(海抜20・5㍍)には地域住民や道の駅の利用者など最大200人が避難できる。
完成式には町議、地元区長、消防団、藤根正典、大久保孝栄、東豊の各県議らが出席。冒頭、能登半島地震の犠牲者に黙とうをささげ、西田健町長が「人の命が一番を基本とし、災害で犠牲者を出さないため、さらにハードとソフトの対策を推進したい」とあいさつ。難場所を建設した幸榮建設(森村哲也代表取締役)に感謝状を贈った。
紀勢国道事務所の市川幸治所長は「防災拠点の完成は、大規模災害発生時の道路啓開作業における実効性の向上が図られることに期待する」、藤根県議は「この施設が町民らの安心安全につながる」などと祝辞を述べた。
一時避難場所前でテープカットし、地元のほたる夢太鼓、熊野水軍子供太鼓が力強い太鼓演奏を繰り広げた。
(2024年3月22日付紙面より)
クマノザクラの観察会
一般社団法人日本クマノザクラの会(勝木俊雄会長)の主催による「春の観察会」が16日、那智勝浦町天満の熊野古道駿田峠の加寿(かす)地蔵尊付近の広場であった。約30人が参加、クマノザクラの発見・発表者である勝木会長より、特徴や見分け方などを学んだ。
同所はクマノザクラが多数自生しており、これほど気軽に間近で観察できる場所はないという。開花のピークはすでに過ぎていたが、遅い個体はまだ咲いていた。
勝木会長はクマノザクラについて「ヤマザクラの変異かと思われていた。那智勝浦町湯川の民家の裏山で花が赤っぽいサクラがあるのを見つけ、今まで見たことがないと調査し、2018年に新種と発表した」と話した。
命名について「いろいろ案が出たが、クマノザクラが言葉として言いやすい」。分布について「熊野や奥吉野、主に熊野川流域に自生している」。開花期について「ソメイヨシノよりちょっと早い時期に咲く」などと伝えた。
他種との見分け方について「花序や花序柄の構造を見るのが大きなポイント」「一つの芽から二つの花が付くものが多い」「花序柄は比較的短いのが特徴」「苞(ほう)は幅広の三角形」などと紹介した。
この後、いずれも花が付いたヤマザクラ、ソメイヨシノ、オオシマザクラ、エドヒガン、クマノザクラの枝を並べ、それぞれの特徴を解説。「クマノザクラはつぼみが濃いピンク色。この色合いは他ではなかなか見ない。個人的には、この上品さは他にはないと思う」などと語った。
参加者は、目の前でそれぞれの特徴を聞き、手持ちのカメラやスマートフォンで写真を撮るなどしていた。質疑応答も盛んに行われた。
熊野市から参加した、地域おこし協力隊の矢島朱莉(あかり)さん(29)は「難しい講義かもと思っていたが、分かりやすくて楽しく勉強できた。ソメイヨシノしか身近になく、クマノザクラはこっちに来て初めて見た。きれいだなと思った。今後は今日聞いたことを意識しながら見てみたい」と述べた。
(2024年3月19日付紙面より)
国際ワークショップ開催 (那智勝浦町 )
世界17カ国から掘削科学の研究者ら約150人が集う「国際科学掘削の次期国際計画に係る国際ワークショップ」が18日~20日(水・祝)、那智勝浦町の体育文化会館などで開催されている。17日には参加者の親睦のため、事前のガイド付き町歩きツアーや夕食会があった。
国際深海科学掘削計画(IODP)は、海底下の堆積物や岩石を掘削し、地球の歴史などを解明する多国間科学研究共同プログラム。2024年9月に計画が終了するため、後継プログラムの立ち上げ準備の一環で開催した。世界遺産や地球科学的に興味深いジオサイトが所在することから、当地方が開催地に選定された。
夕食会は勝浦漁港にぎわい市場で実施。堀順一郎町長は「本町は南海トラフ地震がいつ起こってもおかしくないが、その一方で豊かな自然の恩恵も受けている。開催趣旨に最も適した場所」と歓迎のあいさつ。「マグロはえ縄漁法」にも触れ、海洋資源の持続可能性への取り組みもアピールした。参加者らはマグロ料理を楽しみ、翌日からのワークショップに備えた。
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■20日に市民講演会
20日午後3時~5時、新宮市の丹鶴ホールで市民講演会「地球の恵みを知り、災いに備える―和歌山から始まる世界への挑戦―」が開催される。参加費無料。▽新たな国際深海科学掘削計画の発足と国際ワークショップin 和歌山▽海底を掘って手がかりをつかめ!地球深部探査船「ちきゅう」で挑む地震・津波調査の今!▽和歌山県の温泉と地震―プレートテクトニクスに起因する自然の恵みと災害―などを演題に、研究者らが講演する。
(2024年3月19日付紙面より)
木本、紀南高校で合格発表
三重県立木本、紀南両高校で18日、入学試験の合格発表があった。11日の後期選抜と、すでに内定が通知されている前期選抜の合格者が発表され、両校合わせて202人が合格した。
木本高校では普通科と総合学科を合わせ、158人が喜びの春を迎えた。普通科は後期選抜のみ実施し、定員120人に119人(倍率0・99倍)が受験して、総合学科から1人回り120人が合格した。総合学科は定員40人。前期選抜で22人の合格が内定しており、18人を募集した後期選抜では17人(倍率0・94倍)が受験。16人が合格した。
紀南高校普通科(定員80人)は前期選抜で24人が合格。募集人数56人の後期選抜に20人(倍率0・36倍)が受験し、20人が合格した。
両校では午前9時30分に合格者の受験番号が掲示された。受験生は、自分の受験番号を見つけると「あった、あった」と喜んだ。
(2024年3月19日付紙面より)
和歌山県立串本古座高校吹奏楽部(阿部夏実部長)の第12回定期演奏会が17日に同校第1体育館であり、生徒や教職員、家族や地域住民ら約80人に演奏を披露した。
本年度の部員の集大成であると同時に、3年生部員と最後の思い出をつくって送り出すという意味合いも込めて年度末の定例としている主催公演。コロナ禍で中止や入場制限を余儀なくされる状況が続いたが、本年度は久しぶりに制限なく地域にも公開するとして練習や準備をしてきた。
今回のプログラムは2部構成で、前半の第1部はOBOGなど賛助出演を得てのオープニングを経て、まずは3年生部員2人、現役部員7人、亀谷覚史顧問の10人組で5曲を披露。半ばでは全員が打楽器を手にして奏でるパフォーマンスも繰り広げた。
後半の第2部は再び賛助出演が加わり最大26人組で演奏。序盤は前年度まで指導をしていた漁﨑祐・前顧問(現・新翔高校吹奏楽部副顧問)の指揮で定番曲「Paradise Has No Border」など、中盤以降は亀谷顧問の指揮で定番曲「ディープ・パープル・メドレー」など3曲を奏でた。アニメの楽曲も好む同部。アンコールに応えて楽曲「ルパン三世のテーマ」を響かせて締めくくった。
披露した楽曲数は全12曲。部員が演奏に専念できるよう、同校放送部が舞台演出を一手に引き受けて支援した。本年度の定演を終えて阿部部長は「本番の盛り上がりやノリもあると思うんですけど、昨日や今朝の練習と比べても全然違うと感じるぐらいの演奏ができてすごく楽しかった。盛り上がる曲から静かな曲まで、今日はいろいろな曲を演奏できてどれかは気に入ってもらえたと思う。音楽を通して皆さんに元気になってもらえたらうれしい」と心境を語った。
(2024年3月19日付紙面より)