高田小中に花が届く (新宮市 )
新宮市立高田小・中学校(大家淳志校長)に17日、市立図書館職員によって泰山木(たいさんぼく)の花14輪が届けられた。花の贈り主は市内在住の同図書館利用者。花の寄贈は、中学道徳の教科書(光村図書)に掲載されている「さよならの学校」(今江祥智著)に起因するものだ。
「毎年五月の半ば頃になると、決まって見事な花を付けるその木を見ると、恭(やすし)はおじいちゃんのことをありありと思い起こした。~略~その木はおじいちゃんが七つのときにもらってきて自分で植えたもので、それから七十年以上も、おじいちゃんといっしょに育ってきたものだ」。
そんな書き出しで始まる「さよならの学校」は、「木」を少年に託して亡くなった「おじいちゃん」の思いを引き継ごうとする家族愛にスポットを当てたストーリー。祖父の死に直面した少年の物語を通して、脈々と受け継がれていく生命の大切さや、愛情を受けて育てられてきたことに対する気付きの醸成を学びのテーマとしている。
物語の核を成す「木」こそが泰山木で、「泰山木の花のもつ、包み込むような優しい香りにはかなわなかった」「葉の大きなところも、おじいちゃんの大きな手と似ていた」とあるように、「木」は「おじいちゃん」の象徴として少年の心の成長に寄り添い続ける。
同小中学校に泰山木の花が贈られたのは昨年に続き2度目。この時季に毎年のように同図書館に花を寄贈していた贈り主が、道徳の教材として登場する泰山木の花に興味を示した教職員と図書館職員とのやりとりを耳にしたことがきっかけとなり寄贈につながったという。泰山木は北米原産のモクレン科の常緑高木で、日本には明治初年に渡来した。
贈られた花14輪は、小学生(6人)、中学生(6人)に1輪ずつ配られたほか、小・中学校の各教室に飾り付けられた。
学習指導要領の改訂により本年度から教科書は変更となったが、大輪の花とレモンのような芳香を放つ泰山木を前に大家校長は「(贈り主の)子どもたちを思ってくれる気持ちがありがたい。子どもたちも各家庭に持ち帰って喜んでくれると思う」と笑顔で話した。
(2021年5月19日付紙面より)
日本釣振興会事業で1200匹 (串本町 )
串本町くじ野川にある橋杭ビーチで17日、公益財団法人日本釣振興会によるヒラメの稚魚放流があった。釣り資源としての定着を目指す取り組みで、同会和歌山県支部の岸裕之事務長は「データを得るため、3~4年は続けたい」と意気込んでいる。
同振興会は、放流事業に対する募金や会費を原資にして自然資源の回復や釣り場の育成を目的とした事業を全国各地で実施。日本釣用品工業会との連携事業「つり環境ビジョン」関係で串本ダイビング事業組合と連携して4月にアオリイカ産卵床を設置する取り組みを数年来続けるなど、町内でも適時その会名を耳にするところとなっている。
今回のヒラメ稚魚放流は、同振興会独自事業の一環で実施。フィッシングタウン振興を目指す南紀串本観光協会(島野利之会長)が前年度から同振興会の団体会員となり、その縁で両者協力し取り組むことになった。県南部栽培漁業センターから体長8~9㌢の稚魚1200匹を仕入れ、会員や職員が手分けして浜から放った。同協会の誘いを受け、西向出身で帰省中のアングラーズアイドル・そらなさゆりさん=フライドライス所属=も応援参加。宇井晋介事務局長らと共に波打ち際に稚魚が入った籠を沈め、自力で泳ぎ出るまで待つ形で海へ送り出した。
岸事務長はこの放流を「釣りを楽しむ環境づくり」と位置付け、放流した稚魚の追跡調査をしたい考え。元串本海中公園水族館長で串本の魚にくわしい宇井事務局長によると、橋杭ビーチ周辺にはヒラメがごく少ないため今後の釣果や目撃情報から放流の効果が見えるといい、育つ環境次第だが放流した稚魚が釣りに適した大きさになるまで3、4年かかるという。岸事務長は必要であればデータ収集を目的とした釣り大会を開ければと思い描きつつ、まずは無事の定着と成長を今後に願った。
同支部によるとこの日は串本町内のほか、那智勝浦町内でも会員の紀南釣具センター=新宮市=と協力しヒラメの稚魚放流に取り組んだという。
(2021年5月19日付紙面より)
近大新宮で教育ゼミ
近畿大学附属新宮高校・中学校(池上博基校長、生徒470人)で17日、教育ゼミがあった。小学校教諭や保育士など教育関係の進路を目指す高校1~3年生14人が教育実習生6人との座談会を通して、自分の進路について考えを深めた。
目指す進路についての見識を深め、日々の学習のモチベーションとするため、昨年度から放課後に医療、水産、教育、地域活性化の四つのゼミナールを開いてきた。
座談会で高校生たちは、教師を目指したきっかけや生徒と仲良くなる方法などの他、学部選択や大学受験に向けた勉強方法についても質問。実習生たちは「小学校教諭を目指すなら教育学部がいいと思うけれど、他の学部に通いながら教師を目指す方法もある」「総合大学の方が、いろんな人に出会えるからいいと思う」など自分の経験を交えて答えた。
音楽を教える実習生の石垣花音さん(大阪音楽大学4年生)は「中高生の頃、学校に通うのが大好きだったことから教師を目指した。教育実習は大変と聞いていたが、初日から生徒が仲良くしてくれ、思っていたよりずっと充実している」。
榎本コウさん(高1)は「中1の時の英語の先生に憧れ、英語を勉強するのも楽しいので教師になりたいと思った。実習生の先生の話を聞き、大学生になるのが楽しみになった」と話していた。
(2021年5月19日付紙面より)
補陀洛山寺で春まつり (那智勝浦町 )
補陀落渡海の信仰で知られる那智勝浦町浜ノ宮の補陀洛山寺(髙木亮享住職)は17日、年中行事の一つ「春まつり」を営んだ。例年40人ほどの信者が集まるが、昨年に引き続いて新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、僧侶のみで法要を行った。
補陀落渡海は、平安時代から江戸時代まで行われた宗教儀礼。観音の浄土、補陀落山に往生しようと多くの行者が渡海した。渡海上人が一度乗り込むと出入り口には板が打たれ、外に出られないようにした状態で、海のかなたへ出航したという。
この日、世界遺産に登録されている本堂では、国重要文化財の本尊「三貌十一面千手千眼観世音菩薩」を開帳。髙木亮英副住職らが読経し、コロナ終息の願いも込めて護摩壇で祈とうした。
その後、同寺裏山にある渡海上人の供養塔と歴代住職の墓地で追善供養も営まれた。
髙木副住職は「飢餓や疫病で苦しまれた人々のために渡海された上人のためのご供養をさせていただいた。現在はコロナで厳しい時代。人に対する思いやりや優しさ、慈しみのみ心を持って、心の中で海を渡っていただきたい。一日も早い終息を願い、乗り越えていければ」と語った。
(2021年5月19日付紙面より)
「WEST EXPRESS 銀河」 (JR西日本 )
今夏から秋にかけて、当地方へ運行するJR西日本の長距離列車「WEST EXPRESS 銀河」の運転日や運転時刻などが決定した。運行は7月16日(金)からで、当地方においては新宮・紀伊勝浦・太地・古座・串本の各駅に停車する。
「銀河」は、観光を中心とした西日本エリアの活性化のためにJRが運行する長距離列車。車両は117系6両1編成で定員は90人程度で全車指定席。「多様性」「カジュアル」「くつろぎ」をキーワードに、鉄道の旅の実現を目指し、1両ごとに異なる座席タイプを配置している。車窓からは沿線の風景を楽しめるような座席配置となっている。
運転日は、下り(京都午後9時15分発、新宮午前9時37分着)は7月16日を皮切りに、12月20日(月)までの月・金曜日、上り(新宮正午発、京都午後10時24分着)は7月18日(日)から12月22日(水)までの水・日曜日(上り・下りともにお盆時期除く)。
各停車駅などにおいて特産品販売や乗降者らへのお出迎えも実施。▽ジオガイドが案内する橋杭岩鑑賞(串本駅)▽物販・「那智の扇祭り」大松明(たいまつ)特別展示(紀伊勝浦駅)▽物販・地酒のふるまい、熊野曼荼羅(まんだら)絵解き(新宮駅)▽くじらの竜田揚げふるまい(太地駅)―など、昼行・夜行共に駅ごとに地域色を持たせた「おもてなし」を予定している。
また、運行特典として乗客全員に新宮~周参見駅エリア7市町村の各種施設(50カ所以上)でさまざまな特典や割引サービスが受けられる「紀南×銀河パスポート」も進呈される。乗客対象に「紀南周遊レンタカー特別プラン」などの2次アクセスプランの販売も行っていく。
「銀河」の乗車については、旅行会社が企画・実施する旅行商品に限定して販売する。5月14日以降に「WEST EXPRESS 銀河」特設サイトからリンクする専用ホームページにて告知される。なお、新型コロナウイルス感染症の今後の状況により、計画が変更となる場合がある。
(2021年5月15日付紙面より)
6、8分団が合同で実施 (那智勝浦町消防団 )
那智勝浦町消防団(下地将仁団長)の第6分団(𠮷田創分団長)と第8分団(和田司分団長)は9日、同町南大居の太田の郷グラウンドやその周辺で合同訓練に取り組んだ。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から団活動を自粛していたこともあり、参加した35人の団員は数カ月ぶりの訓練に汗を流した。
色川地域を守る第6分団と太田地域を管轄する第8分団は、どちらかの地域で火災が発生した際には両分団が連携し消火に当たっている。
合同訓練は昨年、コロナ禍で中止となったため、数年ぶりの実施となった。
団員らは太田の郷で各個訓練(訓練礼式)に取り組み、太田川河川沿いの堤防に移動。両分団は互いの消防設備や資機材を確認し合い、ポンプ車や可変式ポンプを使用して放水訓練を行った。
訓練を終え、和田第8分団長は「互いの資機材や放水時の水量の確認、人的交流ができたので有意義だった。コロナ禍だが災害はいつ起こるか分からないため、連携を深めることが重要。次回は第6分団の色川地域で実施したいと思う」。
定期巡回に訪れていた同団本部の山路弘副団長は「このような機会を通じてさらなる連携を図ってほしい」とあいさつした。
(2021年5月15日付紙面より)
高齢者地域見守り隊ら合同啓発 (紀宝町 )
紀宝町の高齢者地域見守り隊(小田原徳子代表)は14日、同町鵜殿の主婦の店で紀宝警察署、紀宝地区防犯協会と合同啓発活動を展開。隊員と警察官らが来店者に啓発チラシを配布し、新型コロナワクチンに便乗した詐欺に遭わないよう呼び掛けた。
消費者庁によると、コロナ禍における詐欺・トラブルに遭った人のうち約80%が「自分は大丈夫」と思っていたという。
「○万円払えば優先的に接種でき、お金は後で返金される」「ワクチン接種に必要なので講座情報を教えてください」などの不審な電話やメールが届く事案が全国で起きており、紀宝署では「管内でこういった不審電話などの相談はありませんが、今後、発生する恐れがあります。ご注意ください」と求めている。
見守り隊が配布したチラシでは「電話で『お金が返ってくる』などと言い現金自動預払機(ATM)に誘導された場合は詐欺です」など注意喚起した。
(2021年5月15日付紙面より)
新宮・那智勝浦天空ハーフマラソン
一般国道42号那智勝浦新宮道路を舞台に開催される新宮・那智勝浦天空ハーフマラソン第9回大会が、新型コロナウイルスの影響で昨年に引き続き中止となることが発表された。
当地方に甚大な被害をもたらした「紀伊半島大水害」(2011年)の復興イベントとして、官民協働で翌12年に始まった。自動車専用道路をコースに使用して行われる、全国的にも珍しい大会。「世界遺産・熊野古道のまち」である新宮市、那智勝浦町の魅力を体感するとともに、地域の振興につなげる目的がある。
毎年、全国各地から多くのマラソンファンが当地方を訪れる人気の催しで、3㌔、10㌔、ハーフの3部で実施される。おととしの第8回大会には3㌔769人(男子416、女子353)、10㌔649人(男子469、女子180)、ハーフ693人(男子591、女子102)、都道府県別では県内から1202人(新宮市548人、那智勝浦町205人含む)、県外から909人が参加した。
中止の判断は新型コロナが今なお拡大し、従来型と比べ感染力が強いとされる変異株による感染者が増加している状況を鑑みたもの。11日に開かれた同大会実行委員会で決定した。
(2021年5月15日付紙面より)
和歌山県空手道選手権大会 (拳武館新宮 )
【第34回】食育は女性の仕事?
食育は国が推進しているものだ、ということはもう皆さんご存知ですよね。私も、食育の資格を取って、その意義や食卓の重要性を感じて、推進に一役買いたいと思っています。でも、食育のことを調べれば調べるほど、大きくなっていく違和感があるんです。それは、「食育=女性の仕事」とされていることです。「私作る人、僕食べる人」というCMが女性蔑視だと大炎上したことがあるのをご存知ですか? なんと、私も生まれる前の1975年のお話です。このCMは2カ月ほどで放送中止になったそうです。でも、このCMから40年以上たっても、この概念は変わってない!と私は思います。
食育基本法が施行されたのが、2005年。結局家庭での食育は、女性が担っているのが現状です。一方、仕事をしながら子育てをしている方はどんどん増えて、ワーキングマザー人口は7割を超えています。そんな中、国を挙げて食育の推進が進められているわけです。私は食と子どもに関する論文を読んでいますが、家庭での食育としてされている研究のほとんどが、母親を対象としたものです。それくらい、今はまだ主体が断然、母親です。一方で食育推進組織では女性比率が低いというデータがあります。食育とジェンダーを研究した論文にもこんな記述があります。「日本における『食育推進』の体制は、専門家集団のところでは男性が多く、実施レベルのところでは女性が多いという構図が伺える」(學苑「男女共生食教育の推進―日本における『食育』推進のジェンダー視点からの分析」、2006年)。つまり、食の専門家としてやることを決めるのは男性で、それを実践するのは女性ということです。これではいつまでたっても、「食育=女性の仕事」という構図から抜け出せません。とはいっても、70年代から続くこのイメージを、今すぐ払拭(ふっしょく)するなんてできそうにありません。
では、私たちがこのジェンダー問題を解決するために、何ができるのか。私はたった一つだと思っています。夫を教育することでも、料理をしないことでもなく、女の子にも男の子にも食育をすることだ!と思うのです。私たちは次世代を育てています。だから、私たちは不満を声に出しながら次世代の子どもたちを正しく育てていかなければならないと思うんです。娘にも息子にも、家事や育児をする力や生き生きと仕事をする力を授けることこそ、この状況の打破につながるのではないかなと。
今の男性たちも悪気があるわけではありません。おそらくは彼らの母親が当たり前のように、家事や育児を一手に担い父親は仕事に没頭していたんだと思います。その様子を見て育ったことで、「料理や家事は女の仕事なんだ」と思ってしまっているだけなんです。だけどそれは当たり前ではないということを私たちは教育していかなければならない。私は「食と子ども」に関して調べれば調べるほどそんな気持ちでいっぱいになっています。
(2021年5月15日付紙面より)